「都構想」とは何か? ~中身を理解してから、投票するために

「大阪市を廃止して区にする」ことが「目的」である大都市法による「都構想」。それすら説明されず「ムダを無くす」「二重行政を無くす」みたいなイメージばかりで中身が分からず、「政治家のケンカ」にすら感じてしまいます。 そこでこのブログでは法律・制度をきっちり読み込んで「都構想」の基本の中身を、順番に説明します。

(4)大阪都構想まるわかりブックの「4000億円(大阪府市大都市局発表)」

要点
1)4000億円は、「5区」の楽観的な2700億円に大阪府の「粗い試算」を足しただけのお金 (アテにしてよい、と住民投票を前に市民に言える金ではない)
2)「ムダの解消で生まれるお金 4000億円」は、5区と同じくウソ
3)「みなさんが使えるお金 4000億円」断言は、5区と同じくウソ
4)大阪府への統合の効果は、あったとしても、わずか
注)「楽観的すぎる仮定」の内容は(3)(←クリック)をご覧ください。

1)4000億円は、5区と大阪府の「粗い試算」を足しただけのお金
大阪維新の会から0億円どころか「4000億円使える」とのきれいなカラーチラシが、これも「大阪府市大都市発表」と、維新の会から各戸に配布されました。 「大阪都構想まるわかりブック」というものです。

この4000億円は、前のページで見た5区の17年間の「2700億円」に、大阪府の「1300億円」を足したもの。つまり、「相当の幅をもって見るべき」「粗い試算」の数字を足し合わせたものにすぎません。
肝心な「粗い試算」であることは全く言わずに、御自分の部下の「大阪府市大都市局」に計算させ発表させて上で、他人事のように大阪府市大都市局発表」と、特別な専門家の太鼓判のような誤解を招く宣伝をしているものです。
例えれば、社長さんが、部下に最大限、楽観的に粗く見積もりさせておいて、顧客に向かって、「これはウチの総務部が弾いた数字だから、太鼓判だ!」と胸を張る、というのは、しっかりした企業ではありえないことです。


2)「ムダの解消で生まれるお金 4000億円」は、5区と同じく
ウソ

この1300億円の内訳も、まず「ムダの解消で生まれるお金」というのはウソです。
大阪府の「収支」だけを見たとしても、次のグラフの通り、
景気回復をアテにした税収の自然増=662億円
は、「ムダの解消や改革によって生み出されるお金」ではありません。

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(5区の「収支」に含まれている「税収増」は、5区が概ね財源不足になっており、その「下支え」になっているので、見かけ上、表れてきません。)

3)「みなさんが使えるお金 4000億円」断言は、5区と同じくウソ
アテにできるかわからない「粗い試算」であることを隠し、「みなさんが使えるお金」と「都構想」の保証金のような説明をするのは有権者の皆さんの誤解を招くウソと言えるでしょう。

さて、この大阪府の「粗い試算」の残り654億円の内 、アテにできるかどうか怪しく、「ムダの解消」なのかも疑問である「地下鉄民営化の税収」35%(323億円)は、5区の場合ほど大きくありません (府税として徴収する本来の市税=固定資産税・法人市民税の増収分を区に分配する率により変動しますが)。
ほかは、人件費抑制での効果をアテにしながら「最高の医療を実現」と言っている「病院民営化」のお金が目立つ程度です。

主は「職員の削減」が効果額の48%(458億円)で、府が受け容れた職員が今の大阪府全体の職員削減率の将来目標と全く同割合で減る、と仮定した人件費削減額です。
しかし「大阪府へ移管する事務に必要な職員数」なのに、いきなり一律に減らせる、との仮定は少々無理があり、これもアテにしてよいお金ではなく、あくまでも「粗い試算」です。
なお、今の大阪府でも全部署一律の割合で削減するのではなく、重点的に縮小削減する部局と、増える部局もあります。大阪府の目標削減率による単純に業務内容を無視した計算は「統合」や「二重行政の解消」の効果の検証ではなく、単なる「仮定に基づく試算」です。 (「効果」の内訳を見るために、%割合や金額は、コストや交付税の減額分などを差し引く前の「効果額」でみています。) 
注)5月15日に次のグラフは修正しています。ごめんなさい。

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このように、5区の2700億円に、「大阪府の1300億円」をわざわざ足した「4000億円」は、楽観的すぎる「粗い試算」によるお金であり、決して「アテにしてよいお金」ではありません

それでは、改めて「5区+大阪府=4000億円」と言われるお金の内訳グラフをみてみましょう。これは「効果額」「生みだされる額」ではありません。「期待する自然税収増」や5区の「貯金の消費」「資産の処分」などもアテ込んだ「収支」額です。そして、失われる地下鉄黒字5000億円の影響は無視しています。

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「長期財政推計「収支」.xlsx」をダウンロード
しかし、何大阪市を廃止して、困難な改革に立ち向かおうとしてるはずの橋下市長は、何故、わざと有権者の皆さんが誤解して油断するような表現をするのでしょう?しかも、言い訳の準備のように、他人事のように「役所の専門家が難しい計算で太鼓判を押してくれた」という表現をとっておられるのでしょうか?
「都構想」が成立したとき、こんなお金をアテにしてたら、大阪市民と大阪府民は実際に困るのが、分かっているのに。


4)大阪府への統合の効果は、あったとしても、わずか

先ほどの金額と割合からお気づきの通り、大阪府の「粗い試算」での「楽観的な推計」をもってしても、「大阪府全体一律の職員削減」を除けば、大阪府の「効果額」は5区と同じく「地下鉄民営化による税収」と「ゴミ収集民間委託による税収」がほとんどで、しかも、大都市の予算規模からすると、わずかしか見込めません。
しかも、逆にこれら2事業を受ける企業があるとしたら、その企業は、5区と大阪府(と国)に一手に、これほどの税金を払い続けた上で経営することになる、という想定です。

「2(2)」で、大阪府への仕事の「統合」はごくわずかで、移管も並行移動か、却って混乱・ロスを生むようなものがほとんどであることを見てきました。
このことは、この楽観的な長期財政推計の計算ですら、ある程度、傾向が表れています。次のグラフをご覧ください。注)5月15日に次のグラフは修正しています。ごめんなさい。

 

 

 

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「長期財政推計(コスト&効果).xlsx」をダウンロード

このように楽観的な「長期財政推計」ですら、大阪府での「効果」はとても小さく、財政規模からみたらさらに小さいものです。

イメージで、「強い大阪府」「大阪府へ統合」と言われ、「だからムダを無くし、4000億円を生みだす」と言われると、誰しもが納得してしまいます。
しかし、このように、ものすごく楽観的な計算をしても、なお、「大阪府」への「統合」の効果はほとんど無く、実際の仕事も並行移動するか、無理矢理移すものが大半なのです。

「都構想」の本質は、「1つの大きな市を無くして、5つに細分化する」ことです。
繰り返しになりますが、これはそもそも、今回の法律の第1条にも明記されてることです。

そして「都構想」は、その「細分化」のコストやロスをほとんど無視して、「お金が生まれる」と言っているものです。

しかも、それは実は「粗い試算」であり、非現実なほど楽観的な仮定に基づいていることを橋下市長はよくご存知です。
なのに、市民の皆さんに「アテにしてよいお金」というイメージを説明なさる時は、必ず「大阪府市大都市局発表」とか「大阪市がきっちり計算した資料」と、政治家の及ばない専門家の精緻な検討した数字であるかのような言い方をしておられるのです。

 

 

 

 

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