「都構想」とは何か? ~中身を理解してから、投票するために

「大阪市を廃止して区にする」ことが「目的」である大都市法による「都構想」。それすら説明されず「ムダを無くす」「二重行政を無くす」みたいなイメージばかりで中身が分からず、「政治家のケンカ」にすら感じてしまいます。 そこでこのブログでは法律・制度をきっちり読み込んで「都構想」の基本の中身を、順番に説明します。

(補遺2) 与えられる「答え」にすがるのではなく、ちょっと考える習慣を

わざわざ記事にするほどの値打ちもないのですが、主にTVやネット上で、「70歳代の人間が反対したから、他の全世代の意思に反して、”都構想”が否決された!」と、
元々「都構想」の内容も理解せぬままコメントしていた人が、算数レベルでもおかしいことを言いだしたので(ワザとダマして、都構想の説明のウソに関心が行かないようにしてる?)、一応、関連する数字をあげておきます。

まずは人口比(20歳以上の人口を100としたパーセント)をご覧ください。
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70代以上の市民は、全人口の大体2割程度ですよね。なので、もし、「70代以上の市民以外は賛成した」のなら、当然「賛成」が結論になるはず。

あくまでも「傾向」を「推測」するための出口サンプル調査
しかも男女比の補正も行っていない調査もあります(実際には女性の方が多かった)。
ですから当然、「傾向」の「推測」は、実際の「結果」で補正されるべきなのに、
なぜか、「傾向」の「推測」の年代別の賛否の比がそのまま「結果」と誤解した発言が、テレビで堂々と見られるのは驚きです。
発言している人は、攻撃するための「道具」として、視聴者を使おうとしてるのでしょう。

しかし、視聴者・市民の側は、いくら自分の気に食わない結果を攻撃し、自分に都合の良い結果に沿う言説なら、、事実と異なり、矛盾してても「歓迎」「応援」!
というのは、単なるケンカです。
ケンカさせあうことで、その一方を、維新や橋下さんの「支持者」に取り込むことができるわけですが、結果として、もちろん、維新や橋下さんを支持するのは自由ですが、あくまでも事実を知って、自分で考えることが大切です。

たしかに、「都構想」の欠陥は、ずっと書いてきたように、かなり複雑で難しい面もあるかもしれません。
でも、今回の投票結果の、こんな単純なウソまで、「敵を攻撃してくれる味方の言うことだから」ということで鵜吞みにして思考停止にしてしまうのでは、未来の大阪でも、未来の日本でも、未来の世界でも、皆さんは争いの「道具」になってしまうだけです。

このように、中身や事実は二の次で「とにかく敵味方でタタきあう」ような思考停止に陥ることは、賛成・反対によらず、何の実りも生みません。

どうぞ、まずは、単純に判ることからでいいので、すこしでも、「いや、ちょっと待てよ」と考えるクセをどうぞ大切になさってください。「賛成派の言うことだから」「反対派の言うことだから」ではなく。各々に、採るべき意見もあれば、退けるべき意見もあります。

とにかく、「人口の2割程度の70歳代以上が反対したので、他の世代が賛成してたのに、否決された」というのは、小学校の算数レベルでオカシイ、ことは誰でも気付くはずです。
そして、こんな些細なはずのことからでも、「自分で考える」ことは、本当に「世の中をよくしたい」「不正をただしたい」とおもうのなら、とても大切です。

「敵」「味方」を分けて、「都合の好さそうな答え」を提供される時こそ、一旦、預かって自分で考える習慣が大切です。
そして、「誰が言ったか?」「どっちの味方か?」ではなく、内容と事柄を冷静に考える事がこれから、もっともっと大切な時代がやってきます。

なお、この「ウソ」を前提にした上で、
「高齢者が居るから、都構想ができなかったんだ!」
「貧乏人が居るから、都構想ができないんだ!!」
大阪市の職員が居なかったら、勝ってた(←これも算数レベルでウソですが)」
という「意見」を、これもTVなどで堂々と言っている方がおられます。

でも、これはただ単に、「自分が望む結果に賛同しないヤツらは、いなければよい!」と言って、あなたの「敵意」を煽り、利用しようとしているだけです。

しかし、役所・行政の仕組みを変える「都構想」により、行政を改革しようとしたあなたは、まさにこれからの「高齢化」「労働人口の減少」「貧困」に対処するためにも、ムダのない・透明性のある行政を進めたい、と思って賛同されたはずです(残念ながら「都構想」の協定書は出来が悪かったのですが)。そして、その思いは正しいと思います。

なのに、自分の意見を邪魔にして黙らせて排除するのなら、透明性ではなく「仲間内で決める行政」になるだけです。ましてや、高齢者や貧困層を排除するのなら、何のための「改革」なのでしょう?
自分に都合のよい人間・存在だけが住み・生きる街をつくりたい!ということなのでしょうか?

残念ながら、「都構想」は、途中から単なる「訳のわからないケンカ」になってしまったところがあります。それを煽ったTVの愚かな司会者や有識者がもたらす「心地よい悪口」に感情を支配されることは、御用心ください。
そんなときこそ、そもそもご自分が、「何のために、何を変えて、何を守り・築こうとして、改革しようとしたのか?」をしっかり考え直すことが大切です。



以下、参考になるグラフを。ただし、これらも、「傾向」を「推測」するための道具にすぎません。

 

市の選挙管理委員会は、前回の選挙から、年代別分析を出してないので、とりあえずの「傾向」をみるために(これも「傾向」ですよ!!)、24区各区の年代別年齢比と、賛成率との相関関係を最小二乗法でざっとみてみました ↓

参考グラフ1

Vs_2

Vs_6

たしかに、30代の多い区では、かなりハッキリ「賛成が多い」区である傾向が強いですね。続いて、20代の多い区でも。
また、40代が多い区でも、賛成が多いことに対して、「弱い相関関係」があります。

一方、たしかに、高齢者で「反対」が多く(賛成の相関関係がマイナス)、出口調査の傾向とは一致しています。サンプルによる傾向の考察どうしとして。

ただし、結局、強い相関関係が特徴的なのは30代、そして20代がそれに次ぐ、というのが顕著であるものの、
20・30・40代以外では、「反対が多い」傾向があります。
また、特徴的なのは「子育て世代の親」が多い区は、「反対が多い区」である傾向が強いことです。とくに成熟した子供を持つ親が多い区では、強い傾向があります。

次の参考グラフ2・3は、ご存知、各区の賛成・反対の率(選挙管理委員会のデータ)です。とにかく、8区が賛成多数、16区は反対多数となっており、全体の結果と「ねじれ」の無い結果になってることがお判りいただけるかとおもいます。

参考グラフ2 (賛成が過半の区は8区 ただし極端な区は見られない)

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参考グラフ3 (浪速区で顕著に棄権率が高いがそれでも5割以上は投票)
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極端な大差がついたわけではなく、また賛成・反対の争点が「都構想」はあいまいだったので、時折言われている「南北問題」のような見方をしても、「課題」「問題意識」については、不確実な想像しかできません。
賛成率のことを、どう解釈するか?で、その想像は変わってきます。
・橋下さんを信用してる率? (反対=橋下さんを信用しない率)
・とにかく変化を支持した率? (反対=政令市を維持したい率)
・都心区になりたい率(北区・西区・中央区)? (反対=都心の区と分離されたくない率)と、このように、いろんな見方ができ、きっと、このどれもが、誰かの理由にはなっていることでしょう。でも「みんな」とは言えないのです。

そして、とにかく忘れてはいけないのは、今回の投票は、「役所・行政の仕組みの変え方の案」についての賛否だったこと、それに判断が下ったこと。
それが全てです。

そして、大阪のこれから、を考えるためには、「都構想」に賛成だった人も、反対だった人も、

「今の大阪市大阪府の行政の仕組みの何が、具体的に問題・課題と考えるか?」
を、イメージやスローガンや「姿勢」ではなく、考えて、議論すること。

そして、その原因と改善のための方法を考えること、

が大切と思います。
「与えられる答え」に支配されるのではなく。