「都構想」とは何か? ~中身を理解してから、投票するために

「大阪市を廃止して区にする」ことが「目的」である大都市法による「都構想」。それすら説明されず「ムダを無くす」「二重行政を無くす」みたいなイメージばかりで中身が分からず、「政治家のケンカ」にすら感じてしまいます。 そこでこのブログでは法律・制度をきっちり読み込んで「都構想」の基本の中身を、順番に説明します。

(6) 「職員数」のトリックについて (人が減り、莫大なお金が増える?  仮定について)

緊急のお願い
もし「とにかく改革で
2700億円・4000億円もお金が使えるそうやから大丈夫!」と軽く思っておられる方は、まず、
(3) 都構想「協定書」や2700億円の「楽観的すぎる仮定」について (←クリック)をご覧ください。「大阪府市大都市局の発表資料」を直接読み解いて、中身を解説しています。

「職員数」の仮定については、重要なので、もうすこし、詳しくみてみましょう。

職員数は、「中核市並みのモデルで検証した職員体制」だ、と説明されています。
具体には、5つの中核市東大阪、高槻、豊中、尼崎、西宮)での、

総務省「定員管理調査」を基に計算したものです。
http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/19163/00131518/24shiryo04-02.pdf)

中核市並みのサービスを行うから、中核市並みの職員数で可能」という理屈です。
ただ、しかし、
この計算では、実際に、仕事をしている人の数とかなりの差が生じます。

 

1)
今の「大阪市のサービス(低下させないと言っている)」と5つの中核市のサービスの内容との比較していません

中核市の「支所」は、大阪市の区役所とは異なります。手続きサービスが主です。
 (区役所はご存知のとおり、全ての窓口サービスおよび、
  福祉サービス、保健所機能、
  また、災害時の防災対応・防犯、地域活動や常時の相談業務を全て備えています。)
・大都市・都心ならではの住宅・企業等の集積、都市・土木施設の整備・維持管理、
 浸水対策、福祉サービスのウエイト

など、違いは色々ありますが、大半、比較していません。


2)

中核市(や多くの中小市町村)では「定員」より遥かに多くの職員が働いています。

中核市では、職員数削減のために、やむをえず身分の不安定な「非常勤職員」「アルバイト」への置き換えを積極的に行っています。
なので「定員管理調査」では、実際の職員数より相当少ない「職員数」で行政サービスできているような計算になってしまいます。
・一方、大阪市は安定し継続した行政サービスとするため、中核市や中小市町村に比べて、「非常勤職員」「アルバイト」は限定的です。
・したがって、「中核市」の「定員管理調査」で「職員数」を計算すると、
 今の大阪市のサービスを維持するのには、相当、足りない「職員数」で
 計算してしまうことになります。
・その結果、
 「5区に分けても、職員を増やす必要無し→逆に減らせる=効果額が生まれる」
 という「仮定」が生まれてしまっています。

 

そもそも、
1つの政令指定都市を、5つの区に分けて、
かつ、
「サービスを低下させない」と言って、
かつ、
大阪府に並行移動する仕事を除けば、”統合”する仕事は微小
なのに、
「職員数」を増やさず、大きく減らせて、毎年、大きなお金が生まれる

という「仮定」は不自然なのですが、
その「仮定」の根本のからくりは、
この「定員」の計算による、「過小見積もり」にあるようです。

これは、主たる「効果額」(17年間で生まれる2700億円)の大きな部分を占め、
また、「必要庁舎面積」にも影響しますので、
「長期財政推計」ひいては「都構想」が、実際に成り立つかどうか?
の極めて大きな点になると思われます。

とても、深刻で重要な点です。

 

(参考)
高槻市人事室長の談話
「職員が2,486名ですから、3分の1に相当する数が非常勤職員として市の仕事に携わってもらっているということです。 それで特に市民課とか支所の窓口業務であるとか、国保、医療給付の窓口業務をそういった非常勤の方々にやっていただいていて、職員数を抑制しています。」

https://www.jiam.jp/melmaga/bunken/newcontents35.html

 

注)

「大阪の実情」として、加算されているのは、以下のもののみです

児童相談所
中核市の事務に、制度上、含まれていないため)

教育委員会事務局
(うち、「教職員人事」は中核市の事務に元々、含まれていない分

ただし教育委員会所管ではないものの、
大阪市の24区の区民センターや、クレオ大阪などは継続するにもかかわらず、
「社会教育等事務」はあえて人口割で算出して、職員数を削減

大阪市は社会教育法に基づく「公民館」としていないためと思われるが、
一方で、区民センター等の人員を別途加算はしていない)

 

・保健所
(5区で13人増程度

これで、現24区役所(24支所)の保健・福祉および環境指導・衛生監視、
および、本所の全サービスに足りる、との仮定。
飲食店・事業所が多い現状を反映し切れているか?は確認できない。
現在は、大阪市全体で「保健所」はルシアス1箇所で統合している。)

生活保護
(被保護世帯数を基に算出(算出式の内容は、非公表)
大阪市の被保護「者」は中核市に比べ極めて多く、
全国トップ(比較・比例すべき対象が無い)
   ↑本来は、
    現在の「大阪市の従事職員数と同数」は最低必要だが

 

 

 

 

「syokuinnsuu_syousai_copy.docx」をダウンロード (←右クリックで保存)

 

(参考)橋下さんが「きっちり計算した」「大臣も大丈夫と言った」と
    何故か間違って説明する17年間で2700億円、「長期財政推計」 の内訳
    = 大阪府市大都市局による「(仮定を置いた)極めて粗い試算」 (3)参照

「17kyougikai_tyoukizaiseisuikei_koukacost.xlsx」をダウンロード(←右クリックで保存)

 ・無理矢理「地下鉄」「ゴミ収集配送」の「効果」を積んでも17年間で400億円ほど
 ・莫大なのは「職員の削減」による「効果額」、、、ということになっている

Photo_7

Photo_8

(出典の補足)
総務省 定員管理調査」は、
「非常勤職員」はカウントしません。
例外的に「臨時職員」として勤務時間・勤務日が常勤職員とほぼ同じ者のみカウントしますが、この定義にあてはまる「アルバイト」はほとんど居ません。
たとえば実際には「3割が非常勤」と人事室長の談話にある「高槻市」でみても、この定義にあてはまる「臨時職員」は0人になっています。
 

総務省定員管理調査
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/c-gyousei/teiin/

・定員管理調査の調査対象の説明 (P5/66 (1P))
http://www.soumu.go.jp/main_content/000296532.pdf
(引用)
「(2)いわゆる「臨時又は非常勤の職員」は調査対象としていない。 ただし、次の要件に該当する「臨時又は非常勤の職員」に限り調査対象としている。
・一般職に属する臨時又は非常勤の職員で、その職名のいかんを問わず、
・勤務時間が一般職に属する常勤の職員と同様に定められている者で、
・その勤務した日(法令の規定により、勤務を要しないこととされ又は休暇を与えられた日を含む。)が、18日以上ある月が平成25年4月1日現在において12月を超える職員」
高槻市の結果を含む「第4表 職種別職員数(総職員)(北海道~沖縄県)」
http://www.soumu.go.jp/main_content/000328131.xlsx

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