「都構想」とは何か? ~中身を理解してから、投票するために

「大阪市を廃止して区にする」ことが「目的」である大都市法による「都構想」。それすら説明されず「ムダを無くす」「二重行政を無くす」みたいなイメージばかりで中身が分からず、「政治家のケンカ」にすら感じてしまいます。 そこでこのブログでは法律・制度をきっちり読み込んで「都構想」の基本の中身を、順番に説明します。

(2)「強力な大阪府」になるのか?~今の大阪市から、大阪府に移る「仕事」

(2)今の大阪市から、大阪府に移る「仕事」

大阪市がやっていた仕事の一部は、大阪府がやるようになります。
どんな仕事が大阪府に移るか、と言うと、

「今までは大都市(政令市)だからやってた仕事」
特別区に分けるのは不適当」または
「他の市町村の範囲は、大阪府がやっている」 などの仕事です。
(なお、分類は、このブログで理解しやすくするために整理したものです。

ア)普通は市町村の仕事だが、「区」では不適当・できないもの
・土地利用の規制(都市計画)
・消防(市内の消防・救急)注)橋下市長は「都になればハイパーレスキューができる」という説明をしますが今の大阪市も備えています。名前が特別高度救助隊と言い同じものです。同じ名前にしたいなら今でもできます。
・下水(雨水・汚水管、マンホール(巨大な「流域下水」以外全て))
・市町村税の7割程度の課税・徴収

(固定資産税2680億円、法人市民税1250億円、都市計画税540億円、
事業所税250億円←→ 大阪市6420億円(473,016/641,870百万円:H25決算ベース)

イ)普通の市町村は自分でもやるが、大阪府のみがやる事にしたもの
・現市内への先端産業・観光客の誘致
・現市内のイベント実施
・大きな公園(大阪城・天王寺・長居・難波宮)の維持管理

ウ)「政令指定都市」廃止により、大阪府がやるしかないもの
・港の運営管理・整備
府道の管理
・大規模施設の管理運営
・教職員の給与支払

エ)大阪市の施設を、大阪府所管にするだけ(場所も箇所数もそのまま)
中央卸売市場
・市立大学(病院も)
・市立高校(主に商業・工業高校)
・環境科学研究所

オ)大阪市の施設を廃止して、大阪府の施設のみで仕事を行うことにしたもの
・精神保健センター

これらのほか、大阪府で行わず、5つの各区ではできない仕事は、

カ)大阪府に移管せず、5区共同で設置する「一部事務組合」で実施
(注:5区合議なので機動的な意思決定(経営方針・廃止等)に適さず)

・市立中央体育館(あれほど「二重行政」とヤリ玉に挙がっていましたが)
泉南市内にある墓地
・保険、システム管理、水道事業など

これらから見ても、「強力な大阪府」になる、というよりは、「1つの市を廃止し、5つの区に分ける」ために、区でしにくい仕事を無理もしながら割り振ったことがわかります。
大阪府」は、「統合されて強力」にはならず、ただ大阪市限定の仕事とお金(財源)をいくつか、ほぼそのまま引き継ぐだけです。
強力にならないどころか、5区内だけ、純然たる市町村事務をたくさん引き受けることになっています。

「強力な大阪府」にならない事は、財政上のお金での効果(4)大阪府統合の「効果」?(←クリック)でも、ハッキリ判ります

「職員数」で見てもわかります。次の表をご覧ください。

大阪府」に移管・譲渡される業務 (H260723協定書案「資料1」およびパッケージ案を参考に作成)

Photo_2

「kouikijimusyokuinsuu.xlsx」をダウンロード (←右クリックで保存)

大阪府に1本化・統合される、と言える仕事は、せいぜい「観光・文化」「成長分野の企業支援」程度で想定している職員数も全体からみればごくわずかです。そして、これらの仕事の分は「5区は人もお金も要らない」と仮定してます。(普通の市町村はこれらの仕事も行いますが、5区は府に任せっきりにすると想定してます。もし自らやるなら、他のサービスを削る必要があります。

ただし、他の市町村なら全て自分で行ってる仕事(消防、下水道(大幹線以外の無数の下水道・マンホール)、都市計画(用途地域)、固定資産税・都市計画税・法人市民税の税率や課税)など)を、5区内だけ、全く不慣れな「大阪府」が直接行うことになります。

そうなると、当然ロスや調整手間が予想され、職員も多く必要となりますが、それらは無い、と仮定しています。(こうした点も、「都構想」「協定書」の前提が「楽観的すぎる」点です。)

 

このように大阪府に事務が移っても、「強力な大阪府」にはならないのです。 

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