「都構想」とは何か? ~中身を理解してから、投票するために

「大阪市を廃止して区にする」ことが「目的」である大都市法による「都構想」。それすら説明されず「ムダを無くす」「二重行政を無くす」みたいなイメージばかりで中身が分からず、「政治家のケンカ」にすら感じてしまいます。 そこでこのブログでは法律・制度をきっちり読み込んで「都構想」の基本の中身を、順番に説明します。

2.協定書の内容  (1)5つの特別区をつくるって?

2.協定書の内容

(1)5つの特別区をつくるって?

①そもそも「特別区」って何?
協定書の「特別区」は、今の大阪市の24の「区」とは、全く別のものです。

1)今の大阪市と24の「区」

今の大阪市は「政令指定都市」といって、大都市ならではの自治体です。
おおまかにいえば、大阪府に余り頼らず、独自で行政サービスができるものです。

今の大阪市の24の「区」は、そんな大都市がきめ細かいサービスをするための大阪市役所の中の組織です。あくまでも、大阪市という強力な「政令指定都市」の中の組織です。

そして、今の大阪市は「大阪市長」と「大阪市議会」が、大阪市のお金の使い方やサービス内容、税金の課税や規制などのルール(条例)を決める責任を負っています。 (注:正式名称は「大阪市会」ですが、ここでは議会であることを示すため「市議会」とします)

 

2)協定書の「特別区

一方、協定書は、「大阪市」そのものを無くし、今の大阪市の範囲を5つに分けて、5つの「市のようなもの(特別区)」を作ろうとするものです。

5つの「特別区」は、それぞれ選ばれた5人の「区長」と5つの「区議会」が、それぞれの「区」の税金の課税や、それぞれの「区」にだけ通用する規制とかルール、罰則などの条例を決めて、それぞれの「区民」向けに限ったサービスをしようとするものです。

そのかわり、大阪市全体に責任を持つ市長や市議会は無くなり、大阪市民全体を対象とするサービスや条例は無くそうというものです。

ですので、今の大阪市内では、5つの「特別区」毎に、別々にサービスを行ない、別々の税率や課税、別々の規制やルールなどが設けよう、というものです。

つまり、5つの区は、いわば互いに「別の市」になります。今でも、隣の「市」は税も条例も違うし、手続きの用紙が違うこともあれば、隣の「市」の図書館や保育所や公民館は利用できないし、隣の「市」の広報や案内も配られないのと同じと思えば近いでしょう。(もちろん相互に対等な余裕があれば相互利用の特例が出来ないわけではないですが)

なお、今の大阪市のサービスについて、「もしやるとしたら、5区がやるか、大阪府がやるか」の「分担の考え方」は、協定書で整理されています。
5区がやらない、と仮定した分だけ、今の大阪市の収入は大阪府に移す仕組みです。(といっても、協定書に付いてる数百ページの表には、肝心の「区が本来やる仕事」と「大阪府に移る仕事」は、具体に書いてないのですが)

ただし、実際に「今の大阪市のサービスが続けられるかどうか?」 また「新たなサービスが必要になったらどうするか?」は、5区それぞれの「お金」の有る・無し、また余裕度や都合によることになります。
とにかく、5区が今よりコストがかかろうとかかるまいと、収入が増えようと減ろうと、それぞれ「できることをやる」ことになります。
いまの大阪市内の範囲に責任を持つ市や区は無くなります。
大阪府が、大阪府の他の42市町村全体のことを考えるのに合わせて、考えることになります。これが本来の「広域の視点」です。しかし、今回の「協定書」や維新の「都構想」では、大阪府と42市町村との関係は、たくさん問題があっても何も改善されません。(改革を標榜する維新マニフェストでも、バブル期同様、お金がいっぱいある楽観的な前提を置いてか、各地への開発投資プランばかりです。)

  今の「大阪市」と「(大阪市の廃止と)5つの特別区設置」を図で比較すると、こんな感じです。

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注)「市」との違いについて
「市のようなもの」は厳密に言えば、「市」ではありません。
どんな市町村でもやってる「都市計画(用途地域)」や「下水道の維持管理・整備」「消防」などは、まったくやらず、区の範囲だけ、不慣れな大阪府がやります。府に移る仕事については「2(2)」をご覧ください。

注)「東京都の特別区」との違いについて(財政調整制度)
特別区は東京都と同じ仕組みになる」という言い方を耳にされたことがあるかもしれません。
たしかに、法律の仕組みとして「東京都の特別区」の地方自治法の仕組みが一部使われています。これは法律の技術的な都合で、なるべく元々ある仕組みを使って、制度の管理をしようとするものです。これが時折「都構想」という名前の根拠と言う人もおられる「都とみなす」です。
ただし、実際には、大切な点で、色々と東京都の特別区とは違う点があります。違いは、「仕事の内容」と「大阪府も含めたお金の流れ」と「お金(収入)の仕組み」です。

本当に、「東京都と同じ制度」だと3税(固定資産税・法人市民税・特別土地保有税)のみで5区の財政調整をまかなう制度になります。
これは東京の「都区制度」は、「23区に集中する膨大な資産・企業」からの膨大な税収を23区ではなく「東京都」が使えるようにする制度だからです。
ですから、税収が少ない「大阪」に制度だけあてはめると、大阪では税収が全く足りず5区の財政が成り経ちません。そこで、協定書では、”当面の間”、大阪府の条例に基づいて府が国からもらう交付税を一部足すことにしてなんとか成り立つようにしています。
ただしこれは「当面の間」に限るとされていて、、いずれは税収が足りなくても5区で我慢しあう、という「東京都の制度」と同様にしていくのが、協定書の前提です。総務省の「特段の意見無し」はこうした前提も踏まえたものです。
ですので、「大阪都構想」は、大阪府内としては、資産・企業が集中する今の大阪市内の税収を、大阪府が使えるようにする」制度ではありますが、
東京都と違って、お金が足りないものどうしの調整手間をかけ続ける制度になります。

ですので、賛成反対は別にして、「東京都と同じ」「東京並み」に「豊かになる」という説明はウソになります

 

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