1.はじめに ~何を決める「住民投票」なの?
今回の住民投票では、5つの点が大きな特徴です。
(1)「大阪市の廃止」「特別区の設置」そして「そのやり方」の賛否を決める投票
(2)「宣伝文句」や「スローガン」を選ぶのではありません
(3)「楽観的すぎる仮定」に、用心が必要
(4)投票用紙には、「大阪市の廃止」と書かれていません(←注意!)
(5)1票でも多い方に決まってしまいます
(1)「大阪市の廃止」「特別区の設置」そして「そのやり方」の賛否を決める投票
そもそも、今回の「住民投票」で、何を決めようとしているのでしょうか? それは、
つまり、
・賛成 =「協定書」の内容に丸ごと賛成
・反対 =「協定書」の全部または一部に賛成できない
を「2者択一」で決める住民投票です。
「大阪市の廃止」が説明されず、投票用紙にも記されてません。ご注意ください。
※特別区の範囲と名前
・北区 :北区・福島区・淀川区・東淀川区・都島区
・中央区 :中央区・浪速区・西成区・天王寺区・西区 とされています。
・湾岸区 :西淀川区・此花区・港区・大正区・住之江区
(南港東1丁目以外の南港に限る)
・東区 :旭区・鶴見区・城東区・東成区・生野区
・南区 :平野区・東住吉区・阿倍野区・住吉区・住之江区(湾岸区部分を除く)
とするとされています。
(2)「宣伝文句」や「スローガン」を選ぶのではありません
「ムダを無くす」「二重行政の解消」とか「大阪を変える」など、勇ましく耳当たりよいスローガン、宣伝文句からは、肝心の具体的な「目的」「中身」はわかりません。
つまり「ムダ」の中身の説明も無いまま、「あなたはムダを無くしたいですよね?」と迫ったり、市民どうしの対立を煽るような場面すら見受けます。
しかし、それでは、正しく理解して、正しく判断することができません。
大切なのは「信じる・信じない」ではなく、
1) なにを「ムダ」と言ってるのか?
2) 「協定書」の”やり方”で、「ムダが無くなる」のか?
3) 「協定書」の”やり方”は、実際に可能なものなのか?
(バブル期のプロジェクトのように「楽観的すぎる仮定」に基づいてないか?)
4) 「議会や行政が身近」になることで、誰の意見が通りやすくなるのか?
(誰の意見が通りにくくなるのか?)
5) 「議会や行政が遠く」になること(=市から府に行く仕事)で、
誰の意見が通りやすくなるのか?通りやすくなるのか?
を、理解して、判断しないといけません。
ですから、もし「ムダを無くすのに賛成なら、投票で賛成を!」という説明は詐欺(サギ)です。言った方に悪気はなくても。
(3)「楽観的すぎる仮定」に用心が必要です (詳しくは「2(3)」で)
まず「協定書」の「目的」についてですが、「無くなるムダ」の内容は具体に書かれていません。
無くなるとハッキリ想定されてるのは、「24区役所でやっている地域と協力した避難所管理などの防災、地域の公園などの管理、地域活動」などで、これらの予算や職員コストはかからない事とされてます。
(ほか、細かい施設の一部廃止の「効果」は、「2(4)」をご覧ください。)
その他の 全ての仕事は、区か府に移行するとされています。
(府に行く仕事は、「2(2)」をご覧ください)
ですから「ムダの解消」と言うのは、ほぼ「仕事の中身」には表れていません。
一方、増えるコストはどうでしょう?
大きな1つの市でやってる仕事を5つに分ければ、手間が増えて人手のコストが多くかかるはずです。
新しい市役所並みの建物をいくつも建てる土地や工事のお金も余分に必要です。
しかし、「人手(職員数)」は、むしろ大幅に減らせる」という「楽観的すぎる仮定」を置いた「推計」が示されています(長期財政推計)。
あくまでも「仮定」ですが、この「人手(職員数)」が削減できて「お金」が生まれることになります。
実は「相当の振れ幅を持ってみるべき」「極めて粗い試算」と念押しされてる「仮定」なのですが、橋下市長は「都構想によって生み出されると計算したお金」と断言しており、誤解が広がっています。
この「人手削減をアテにしたお金」の他に、
大阪市の廃止と関係のない「地下鉄の売却・民営化」と「ゴミ処理の民営化」によりお金が生み出されるとアテにして「試算」したものが、
橋下市長の言う「17年間で2700億円」のほぼ全てです。
なお、詳しくは「4(4)」で説明しますが、
この「地下鉄」「ゴミ」でお金が生まれるか? にも、大きな疑問があります。
橋下市長はお金をアテにしているので、
「大阪市の事業の売却=改革だ! これに反対する大阪市はつぶせ!」とのようですが、そもそも、大阪市の廃止とは別に、個々の事業についてしっかり検討すべきことです。一緒くたに議論・勝負する話ではありません。
(4)投票用紙には、「大阪市の廃止」と書かれていません
これも、実は、とても異例・異常なことなのですが、
皆さんに投票日に配られる「投票用紙」には、「大阪市の廃止」とは全く書かれていません。ただ、「大阪市における特別区の設置」 と書かれています。
しかし、問われてるのは初めのとおり「大阪市の廃止」と「区の設置」と「やり方」です。
「大阪市は今のままあって、その中に設置する」と誤解しないよう、注意が必要です。
もし、法律の表現に沿って書けば、「協定書に基づき、大阪市を廃止し、特別区を設けること」の賛成・反対とすべきなのですが。
大都市地域における特別区の設置に関する法律 (以下「特別区法」)
第一条 この法律は、道府県の区域内において関係市町村を廃止し、特別区を設けるための手続並びに特別区と道府県の事務の分担並びに税源の配分及び財政の調整に関する意見の申出に係る措置について定めることにより、地域の実情に応じた大都市制度の特例を設けることを目的とする。
(5)1票でも多い方に決まってしまいます
今回の住民投票は、いくら投票率が低くても、1票でも多い方に決まります。
なので、投票の趣旨そのものに賛成できなくても、行かないと決まってしまいます。つまり、
例えば、「賛成」が1票でも多ければ、
「協定書」の「中身とやり方」に従い、大阪市を廃止し、5つの特別区を作る
と決まります。
(投票率がいくら低くても、1票でも多い方に決まります)
という、責任重大な住民投票なのです。
たしかに「特別区」は、まだ実際には存在もしていないものです。
その是非を聞かれても、「楽観的すぎる仮定」を信じるか?信じないか?を
判断するのは難しいかもしれません。
まとめ
・確実な事実
・大阪市(政令指定都市)が無くなり、5つの区に分ける
・そのためのコストが必要
・大阪府へは「組織の所管替え」があるものの、「統合」する仕事は余り無い
・楽観的すぎる仮定 (非現実な「効果」の仮定)
・5区に分けても、人手は増えない、むしろ、大幅に減らしてお金が生まれる と仮定
・「地下鉄の売却・民営化」と「ゴミ処理の民営化」により、大金が生まれる と仮定
(しかも、大阪市の廃止とは関係無い)