「都構想」とは何か? ~中身を理解してから、投票するために

「大阪市を廃止して区にする」ことが「目的」である大都市法による「都構想」。それすら説明されず「ムダを無くす」「二重行政を無くす」みたいなイメージばかりで中身が分からず、「政治家のケンカ」にすら感じてしまいます。 そこでこのブログでは法律・制度をきっちり読み込んで「都構想」の基本の中身を、順番に説明します。

(8)各区はいつまで相部屋・釘付けか?~新庁舎建設・移転の時期

1)特別設置後の「大阪のすがた」について
・今のままの場所で、5区の職員が混ざって仕事する「相部屋・仮配置」。(仮移転は無理)
・5つの全ての区が新庁舎用意するまで、「北区」も相部屋のまま

2)いつ頃、「5区相部屋・仮住まい」は、解消できるのか?
・新庁舎建設の必要、 場所・規模も含めた「住民合意」に何年もかかるのが普通
・それらが決まったあと、「計画から工事までで概ね5年」
・「仮配置」期間は、余分にコストがかかる (ATCなど民間ビル賃借料、年に何十億円)

1)特別設置後の「大阪のすがた」について
大阪市廃止するをわかり、かつ効果額もアテにはできないとわかりながらも、何かの理由で「賛成」される方にとって、またはそうでない方も、平成29年(西暦2017年)の4月から、どんな様子なのでしょう?

橋下市長が指示して「大阪府市大都市局」に作らせた「工程表(p45)」(←クリックでリンク)では、「現在の部局を基本とした暫定配置」とあります。
つまり、平成29年時点では、各5区の職員になっても、全員、相互に動く場所もなく、手間も時間もお金もかかるので、仮移転もできず、「今のままの場所で、5区の職員が混ざって仕事」するほかない、ということです。

無理やり「区長」とその少数の取り巻きくらいは5区の「区役所」(現市役所、城東、阿倍野、西成、港の現区役所庁舎)に入るかしれません(p46「区長マネジメントに必要な部局」)。また議会は「能勢町並み」(第15回法定協議会p49 今井豊委員)(←クリックでpdf)とのことなので、控室もなく開会中に会議室を使う位しかムリですが、各区議会の判断です。

今の区役所(支所)には、「市民協働課」「総務課」は誰も居なくなるので、今まで各地域の避難所のカギを預かったり管理してくれてた地域の方々は、どこかの庁舎にまとまった「新たな区の担当」とのやりとりに。しょっちゅう現場来てくれて、相談できた「市の担当者」はいなくなります。

ほかのあらゆる仕事は(とくに業者さんの申請とか)、今の市役所なりあちこちの賃借注のビルに行って、各区の担当者を探して、やりとりすることになります。
もちろん、自分の区の職員以外は「他の市の職員」なので代わりには用は済みません。つまりは、1つの仕事につき最低5人職員が居ても、その内、自分の区の担当は1人だけです。

区の職員さんからしたら、自分の区の相談をしようにも、自分の区長や幹部が5~6の建物に分散してる上、肝心の職員は、淀屋橋の今の市役所やATCやルシアスやオークに居るので、不便です。
住民からすれば、見かけは、さほど今と変わらないものの、何か、判断や問い合わせをすると、反応がやたら遅かったり、実は別の区の職員だったりして、手間取ったり混乱することは増えるかもしれません。
書類を探してもらうのでも、5区毎に書類が増刷されて、整理格納するような場所はありませんから、色々とどこおっても仕方ありません。

2)いつ頃、「5区相部屋・仮住まい」は、解消できるのか?
「5区相部屋・仮住まい」を解消するには、全ての区で、「新しい庁舎」を確保して、今の大阪市役所やATCから出ていく必要があります。これは今の市役所庁舎を有する「(新)北区」でも同じです。他の4区が出て行かないと、今の市役所庁舎は下宿人の相部屋状態のままなので。

さて、市長の部下「大阪府市大都市局」が示した「工程表(p46) 」(←クリックでリンク)では、新庁舎の基本計画から工事完了まで60カ月、概ね5年とあります。 

5年というのも、そこそこ長いですが、あくまでもこれは、「区長・区議会が建設すると決めて、場所や規模・内容も決めてから(新庁舎建設を決定)」の期間です。

今でも、大阪市の予算の3割は福祉関係の扶助費という状況。今後さらに予算は苦しく節約しないといけません。そんな中で、実際に、「どんな部署にどれだけの職員を雇って仕事するか?」「新庁舎に分散していた部署をまとめるのか、分散のままにして新庁舎費用を節約するか(いわゆる600億円はこの”節約案”仮定)?」など、検討して決めないといけないません。
また、各区内のどこに建てるか?で、区の中の住民の便利・不便が大きく影響しますので「空いてる土地があったら建てればよい」ともなりません。そもそも、空いてる大きい土地が、普通の値段で売ってもらえる土地があるか?も怪しい限りです。田舎ではないので。

さらには、「本当に、わざわざ、役所の建物を建てるのか?相部屋でも実際には仕事はできるのではないか?」という疑問も、当然起きます。日々の福祉や教育のお金は簡単に減らしたり増やしたりできません。道路や下水の維持管理も日々すぐ対応が必要です。
一方、庁舎建設などは、一旦建てたら、その莫大な借金を長年返済する負担が生まれますが、建てなければ、かかりません。いわゆる「住民サービス施設」でもなく、「とりあえず今は仕事できてるだろう」という状態からの「新庁舎建設」は住民の理解を得づらいものの代表例です。近くの例では滋賀県高島市がそれで議論しておられるのは御存じでしょう。
高島市のような市町村合併の場合は、「合併特例債」という借金で新庁舎を建てることができ、借金返済時には大半は国がそのお金の面倒をみてくれる、という優遇策があるのに、やはり議論になっているのです。
もちろん「都構想」ではそんな優遇策はありません。利子も含めて全額、区民の自腹です。)

そんなわけで、楽観的に言ったとしても、「概ね5年」とされてる庁舎建設作業が、1年やそこらですぐスタートできる、と予想するのはいくらなんでも非現実と思われます。
何年も、何年も、建設場所も合意できない、規模も決まらない、ということも、ある程度覚悟しておく必要があります。

なお、「長期財政推計」では、今も橋下市長の大阪市が毎年20~30億円ほどATCに払い続けている賃料の内、事務所分が要らなくなる、と仮定しています。だから「長期財政推計」では「民間ビル賃借料」がマイナスになっているのにお気づきでしょうか?
この費用も、引き続きずっと、各区が負担しつづけることになります。

「大阪を変える」ことにはなりますが、このような「変わり方」になります。もちろん、お金がなければ、そもそも、庁舎を建てるという相談の意味もなくなりますが。