「都構想」とは何か? ~中身を理解してから、投票するために

「大阪市を廃止して区にする」ことが「目的」である大都市法による「都構想」。それすら説明されず「ムダを無くす」「二重行政を無くす」みたいなイメージばかりで中身が分からず、「政治家のケンカ」にすら感じてしまいます。 そこでこのブログでは法律・制度をきっちり読み込んで「都構想」の基本の中身を、順番に説明します。

(補遺2) 与えられる「答え」にすがるのではなく、ちょっと考える習慣を

わざわざ記事にするほどの値打ちもないのですが、主にTVやネット上で、「70歳代の人間が反対したから、他の全世代の意思に反して、”都構想”が否決された!」と、
元々「都構想」の内容も理解せぬままコメントしていた人が、算数レベルでもおかしいことを言いだしたので(ワザとダマして、都構想の説明のウソに関心が行かないようにしてる?)、一応、関連する数字をあげておきます。

まずは人口比(20歳以上の人口を100としたパーセント)をご覧ください。
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70代以上の市民は、全人口の大体2割程度ですよね。なので、もし、「70代以上の市民以外は賛成した」のなら、当然「賛成」が結論になるはず。

あくまでも「傾向」を「推測」するための出口サンプル調査
しかも男女比の補正も行っていない調査もあります(実際には女性の方が多かった)。
ですから当然、「傾向」の「推測」は、実際の「結果」で補正されるべきなのに、
なぜか、「傾向」の「推測」の年代別の賛否の比がそのまま「結果」と誤解した発言が、テレビで堂々と見られるのは驚きです。
発言している人は、攻撃するための「道具」として、視聴者を使おうとしてるのでしょう。

しかし、視聴者・市民の側は、いくら自分の気に食わない結果を攻撃し、自分に都合の良い結果に沿う言説なら、、事実と異なり、矛盾してても「歓迎」「応援」!
というのは、単なるケンカです。
ケンカさせあうことで、その一方を、維新や橋下さんの「支持者」に取り込むことができるわけですが、結果として、もちろん、維新や橋下さんを支持するのは自由ですが、あくまでも事実を知って、自分で考えることが大切です。

たしかに、「都構想」の欠陥は、ずっと書いてきたように、かなり複雑で難しい面もあるかもしれません。
でも、今回の投票結果の、こんな単純なウソまで、「敵を攻撃してくれる味方の言うことだから」ということで鵜吞みにして思考停止にしてしまうのでは、未来の大阪でも、未来の日本でも、未来の世界でも、皆さんは争いの「道具」になってしまうだけです。

このように、中身や事実は二の次で「とにかく敵味方でタタきあう」ような思考停止に陥ることは、賛成・反対によらず、何の実りも生みません。

どうぞ、まずは、単純に判ることからでいいので、すこしでも、「いや、ちょっと待てよ」と考えるクセをどうぞ大切になさってください。「賛成派の言うことだから」「反対派の言うことだから」ではなく。各々に、採るべき意見もあれば、退けるべき意見もあります。

とにかく、「人口の2割程度の70歳代以上が反対したので、他の世代が賛成してたのに、否決された」というのは、小学校の算数レベルでオカシイ、ことは誰でも気付くはずです。
そして、こんな些細なはずのことからでも、「自分で考える」ことは、本当に「世の中をよくしたい」「不正をただしたい」とおもうのなら、とても大切です。

「敵」「味方」を分けて、「都合の好さそうな答え」を提供される時こそ、一旦、預かって自分で考える習慣が大切です。
そして、「誰が言ったか?」「どっちの味方か?」ではなく、内容と事柄を冷静に考える事がこれから、もっともっと大切な時代がやってきます。

なお、この「ウソ」を前提にした上で、
「高齢者が居るから、都構想ができなかったんだ!」
「貧乏人が居るから、都構想ができないんだ!!」
大阪市の職員が居なかったら、勝ってた(←これも算数レベルでウソですが)」
という「意見」を、これもTVなどで堂々と言っている方がおられます。

でも、これはただ単に、「自分が望む結果に賛同しないヤツらは、いなければよい!」と言って、あなたの「敵意」を煽り、利用しようとしているだけです。

しかし、役所・行政の仕組みを変える「都構想」により、行政を改革しようとしたあなたは、まさにこれからの「高齢化」「労働人口の減少」「貧困」に対処するためにも、ムダのない・透明性のある行政を進めたい、と思って賛同されたはずです(残念ながら「都構想」の協定書は出来が悪かったのですが)。そして、その思いは正しいと思います。

なのに、自分の意見を邪魔にして黙らせて排除するのなら、透明性ではなく「仲間内で決める行政」になるだけです。ましてや、高齢者や貧困層を排除するのなら、何のための「改革」なのでしょう?
自分に都合のよい人間・存在だけが住み・生きる街をつくりたい!ということなのでしょうか?

残念ながら、「都構想」は、途中から単なる「訳のわからないケンカ」になってしまったところがあります。それを煽ったTVの愚かな司会者や有識者がもたらす「心地よい悪口」に感情を支配されることは、御用心ください。
そんなときこそ、そもそもご自分が、「何のために、何を変えて、何を守り・築こうとして、改革しようとしたのか?」をしっかり考え直すことが大切です。



以下、参考になるグラフを。ただし、これらも、「傾向」を「推測」するための道具にすぎません。

 

市の選挙管理委員会は、前回の選挙から、年代別分析を出してないので、とりあえずの「傾向」をみるために(これも「傾向」ですよ!!)、24区各区の年代別年齢比と、賛成率との相関関係を最小二乗法でざっとみてみました ↓

参考グラフ1

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Vs_6

たしかに、30代の多い区では、かなりハッキリ「賛成が多い」区である傾向が強いですね。続いて、20代の多い区でも。
また、40代が多い区でも、賛成が多いことに対して、「弱い相関関係」があります。

一方、たしかに、高齢者で「反対」が多く(賛成の相関関係がマイナス)、出口調査の傾向とは一致しています。サンプルによる傾向の考察どうしとして。

ただし、結局、強い相関関係が特徴的なのは30代、そして20代がそれに次ぐ、というのが顕著であるものの、
20・30・40代以外では、「反対が多い」傾向があります。
また、特徴的なのは「子育て世代の親」が多い区は、「反対が多い区」である傾向が強いことです。とくに成熟した子供を持つ親が多い区では、強い傾向があります。

次の参考グラフ2・3は、ご存知、各区の賛成・反対の率(選挙管理委員会のデータ)です。とにかく、8区が賛成多数、16区は反対多数となっており、全体の結果と「ねじれ」の無い結果になってることがお判りいただけるかとおもいます。

参考グラフ2 (賛成が過半の区は8区 ただし極端な区は見られない)

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参考グラフ3 (浪速区で顕著に棄権率が高いがそれでも5割以上は投票)
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極端な大差がついたわけではなく、また賛成・反対の争点が「都構想」はあいまいだったので、時折言われている「南北問題」のような見方をしても、「課題」「問題意識」については、不確実な想像しかできません。
賛成率のことを、どう解釈するか?で、その想像は変わってきます。
・橋下さんを信用してる率? (反対=橋下さんを信用しない率)
・とにかく変化を支持した率? (反対=政令市を維持したい率)
・都心区になりたい率(北区・西区・中央区)? (反対=都心の区と分離されたくない率)と、このように、いろんな見方ができ、きっと、このどれもが、誰かの理由にはなっていることでしょう。でも「みんな」とは言えないのです。

そして、とにかく忘れてはいけないのは、今回の投票は、「役所・行政の仕組みの変え方の案」についての賛否だったこと、それに判断が下ったこと。
それが全てです。

そして、大阪のこれから、を考えるためには、「都構想」に賛成だった人も、反対だった人も、

「今の大阪市大阪府の行政の仕組みの何が、具体的に問題・課題と考えるか?」
を、イメージやスローガンや「姿勢」ではなく、考えて、議論すること。

そして、その原因と改善のための方法を考えること、

が大切と思います。
「与えられる答え」に支配されるのではなく。

 

 

(補遺1)今こそ「対立」のワナから抜け出し、「改革」を具体に考える

「都構想」の案の内容をイメージにスリ換えて誤解させ、現在の大阪市大阪府の課題の原因を単純化し誤解させ、多くの市民に対して「姿勢に対する期待」を抱かせ対立を煽った橋下氏とマスコミの責任は大きいでしょう。
「都構想の案」の内容の検証・報道の検証は極めて重要です。
ただ「変化」「将来像」などと無責任に報道するのではなく。

今朝も全国ニュースでは、「改革を訴えた」「大阪の将来像を示した」とイメージを報道し、内容の検証はされない「誤報」が続いています。

また、「大阪維新の会」の結党の原点は、WTC(ワールドトレードセンタービル)の無理矢理の購入と大阪府庁移転だったのに、まったく報じず。
そして、最後まで、実態が無かった(賛否は別として、「強い大阪府」が示せず、1市を5分割するデメリットの隠蔽に終始した)「都構想」が「結党の原点」であるとも全国に報じています。

あわせて、「敗れた改革者」橋下氏という実態をともなわない虚像を全国で報道してもらう、という橋下氏にとっては、願っても無い状況となっているのみです。

「マスコミ」がなぜ、このようになっているか? は、真剣に検証が必要とおもいます。ただ、不勉強なだけなのか?

 

一方、 半数の市民が「誤解」した上にせよ、「望んだこと」は何か?
  賛成した市民自身も含め、私達が具体に冷静に考えることこそ大切です。

「変えたい」「変化を望んだ」のは事実ならば、
今こそ 「都構想案の賛否」でなく、「何を変えたいのか?」「何は今後やってほしくない」のか?を一緒に。

それが「楽観的すぎる成長仮定・予測に基づく”投資”」「市町村への一方的な仕事押し付け=分権の神聖化」の見直しであるならば、
すなわち、
「低成長・人口減少を前提とした”投資”(人への投資を含む)」そして「市町村の仕事・各府県の仕事の統合・効率化も含む”行政機構の見直し”」の検討であるなら、私は、共に考えようと思います。

(8)各区はいつまで相部屋・釘付けか?~新庁舎建設・移転の時期

1)特別設置後の「大阪のすがた」について
・今のままの場所で、5区の職員が混ざって仕事する「相部屋・仮配置」。(仮移転は無理)
・5つの全ての区が新庁舎用意するまで、「北区」も相部屋のまま

2)いつ頃、「5区相部屋・仮住まい」は、解消できるのか?
・新庁舎建設の必要、 場所・規模も含めた「住民合意」に何年もかかるのが普通
・それらが決まったあと、「計画から工事までで概ね5年」
・「仮配置」期間は、余分にコストがかかる (ATCなど民間ビル賃借料、年に何十億円)

1)特別設置後の「大阪のすがた」について
大阪市廃止するをわかり、かつ効果額もアテにはできないとわかりながらも、何かの理由で「賛成」される方にとって、またはそうでない方も、平成29年(西暦2017年)の4月から、どんな様子なのでしょう?

橋下市長が指示して「大阪府市大都市局」に作らせた「工程表(p45)」(←クリックでリンク)では、「現在の部局を基本とした暫定配置」とあります。
つまり、平成29年時点では、各5区の職員になっても、全員、相互に動く場所もなく、手間も時間もお金もかかるので、仮移転もできず、「今のままの場所で、5区の職員が混ざって仕事」するほかない、ということです。

無理やり「区長」とその少数の取り巻きくらいは5区の「区役所」(現市役所、城東、阿倍野、西成、港の現区役所庁舎)に入るかしれません(p46「区長マネジメントに必要な部局」)。また議会は「能勢町並み」(第15回法定協議会p49 今井豊委員)(←クリックでpdf)とのことなので、控室もなく開会中に会議室を使う位しかムリですが、各区議会の判断です。

今の区役所(支所)には、「市民協働課」「総務課」は誰も居なくなるので、今まで各地域の避難所のカギを預かったり管理してくれてた地域の方々は、どこかの庁舎にまとまった「新たな区の担当」とのやりとりに。しょっちゅう現場来てくれて、相談できた「市の担当者」はいなくなります。

ほかのあらゆる仕事は(とくに業者さんの申請とか)、今の市役所なりあちこちの賃借注のビルに行って、各区の担当者を探して、やりとりすることになります。
もちろん、自分の区の職員以外は「他の市の職員」なので代わりには用は済みません。つまりは、1つの仕事につき最低5人職員が居ても、その内、自分の区の担当は1人だけです。

区の職員さんからしたら、自分の区の相談をしようにも、自分の区長や幹部が5~6の建物に分散してる上、肝心の職員は、淀屋橋の今の市役所やATCやルシアスやオークに居るので、不便です。
住民からすれば、見かけは、さほど今と変わらないものの、何か、判断や問い合わせをすると、反応がやたら遅かったり、実は別の区の職員だったりして、手間取ったり混乱することは増えるかもしれません。
書類を探してもらうのでも、5区毎に書類が増刷されて、整理格納するような場所はありませんから、色々とどこおっても仕方ありません。

2)いつ頃、「5区相部屋・仮住まい」は、解消できるのか?
「5区相部屋・仮住まい」を解消するには、全ての区で、「新しい庁舎」を確保して、今の大阪市役所やATCから出ていく必要があります。これは今の市役所庁舎を有する「(新)北区」でも同じです。他の4区が出て行かないと、今の市役所庁舎は下宿人の相部屋状態のままなので。

さて、市長の部下「大阪府市大都市局」が示した「工程表(p46) 」(←クリックでリンク)では、新庁舎の基本計画から工事完了まで60カ月、概ね5年とあります。 

5年というのも、そこそこ長いですが、あくまでもこれは、「区長・区議会が建設すると決めて、場所や規模・内容も決めてから(新庁舎建設を決定)」の期間です。

今でも、大阪市の予算の3割は福祉関係の扶助費という状況。今後さらに予算は苦しく節約しないといけません。そんな中で、実際に、「どんな部署にどれだけの職員を雇って仕事するか?」「新庁舎に分散していた部署をまとめるのか、分散のままにして新庁舎費用を節約するか(いわゆる600億円はこの”節約案”仮定)?」など、検討して決めないといけないません。
また、各区内のどこに建てるか?で、区の中の住民の便利・不便が大きく影響しますので「空いてる土地があったら建てればよい」ともなりません。そもそも、空いてる大きい土地が、普通の値段で売ってもらえる土地があるか?も怪しい限りです。田舎ではないので。

さらには、「本当に、わざわざ、役所の建物を建てるのか?相部屋でも実際には仕事はできるのではないか?」という疑問も、当然起きます。日々の福祉や教育のお金は簡単に減らしたり増やしたりできません。道路や下水の維持管理も日々すぐ対応が必要です。
一方、庁舎建設などは、一旦建てたら、その莫大な借金を長年返済する負担が生まれますが、建てなければ、かかりません。いわゆる「住民サービス施設」でもなく、「とりあえず今は仕事できてるだろう」という状態からの「新庁舎建設」は住民の理解を得づらいものの代表例です。近くの例では滋賀県高島市がそれで議論しておられるのは御存じでしょう。
高島市のような市町村合併の場合は、「合併特例債」という借金で新庁舎を建てることができ、借金返済時には大半は国がそのお金の面倒をみてくれる、という優遇策があるのに、やはり議論になっているのです。
もちろん「都構想」ではそんな優遇策はありません。利子も含めて全額、区民の自腹です。)

そんなわけで、楽観的に言ったとしても、「概ね5年」とされてる庁舎建設作業が、1年やそこらですぐスタートできる、と予想するのはいくらなんでも非現実と思われます。
何年も、何年も、建設場所も合意できない、規模も決まらない、ということも、ある程度覚悟しておく必要があります。

なお、「長期財政推計」では、今も橋下市長の大阪市が毎年20~30億円ほどATCに払い続けている賃料の内、事務所分が要らなくなる、と仮定しています。だから「長期財政推計」では「民間ビル賃借料」がマイナスになっているのにお気づきでしょうか?
この費用も、引き続きずっと、各区が負担しつづけることになります。

「大阪を変える」ことにはなりますが、このような「変わり方」になります。もちろん、お金がなければ、そもそも、庁舎を建てるという相談の意味もなくなりますが。

(7) 「サービスは低下しない」は本当か? ~職員数・お金・サービスの3すくみ

要点
1)明らかなウソ「4000億円」 ~ 吹っ飛んだ「粗い試算」「相当の幅」の前提
2)「大阪府への統合」によりお金が生まれる、というウソ
3)お金・職員数が足りないので、「今の住民サービス」は維持されない
4)「財政調整制度」「協定書」はお金の分配の仕方。「収支悪化しない」制度ではない。
5)「過去の失敗」に向き合わず、「楽観的な期待・前提」に基づくのが「大阪都構想

1)明らかなウソ”4000億円” ~吹っ飛んだ「粗い試算」「相当の幅」の前提

長期財政推計は、「粗い試算」なので、本来は「サービスは低下しない」「お金は足りる(生まれる)」などとは言い切れないことが大前提でした。
逆に、「この仮定が成り立つのなら、サービスは低下しない」「お金は足りる」という試算です。

だからこそ、これまで見て来たとおり、
・実質よりも相当少ない数字が出せる、中核市定員平均による職員数
年300億円の黒字放棄をカウント外とし、副業収入増?までアテにした地下鉄民営化
・肝心の民間企業から条件に無理アリと指摘されている、安価なゴミ収集・配送
など、「最大限、維新と橋下市長の主張に沿った項目を取り入れて、楽観的に予測」、という大胆な「仮定」を取り入れた「粗い試算」がされているものです。

この作業をした大阪府市大都市局は、市長の直轄機関として市長の意向で動くのは当然とはいえ、「粗い試算」という大前提があったので、おそらく「役人としてウソ」ではない作業(誤解招くにせよ)だったようです。
そもそもこの作業は「4つの区割り案の比較のため条件を揃えて出したもの」にすぎなかったのです。

しかし、今、住民投票を間近にして、橋下さんや維新が「大阪都構想まるわかりブック」や市税を使った説明会で公言している「みなさんが使えるお金4000億円」「ムダの解消により生まれる4000億円」は、これらの前提を意図的に隠し、「確実にアテにしてよいお金」と誤解させています。
しかもこの巨大な「効果額」に加えて、「貯金(基金)の消費」「税収の自然増期待」「新たな借金」「土地資産の切り売り」までを大きく含んだお金です。つまり、明白なウソです。

ですから、大阪府市大都市局の資料や先の説明会の「質問票への回答」でも、「使えるお金4000億円」「ムダの解消による4000億円」などの記載は一切ありません。

橋下さんや維新は、しかし、この「4000億円」を常に「大阪府市大都市局”発表”」とまで書いて「行政のプロ中のプロが計算したのだから信じなさい!」という、これも明白なウソです。重要で悪質なウソと言ってもいいでしょう。

注)
橋下市長は住民説明会でも「お金がなければなんにもできない」とした上で、「サービスは変わらない、もっとよくなる」と明言されています。
しかし、その根拠は「大臣」と「大都市局」の勝手な「解釈」のみです。
総務大臣がチェックした。問題あるなら指摘するハズ」「大阪府市大都市局の資料に明記(←自分の部下)」と。
事実関係や条件を歪曲してまで、責任回避する理由は、御自身、問題を充分ご承知の傍証です。

ですから、「(17年間で)4000億円」の増収は、決してアテにしてはいけないお金です。
そして、そもそも、「増収」になるというのも、「楽観的な仮定」に基づいた「粗い試算」なのです。 (しかも、民営化により失う、地下鉄17年間5000億円の減は、無視した金額)
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2)「大阪府への統合」によりお金が生まれる、というウソ

大阪市を廃止して、5つに分ける」のだからコストとロスが生じるのが常識なのに、なぜ、お金が生まれる、という常識と正反対のウソが信用されやすいのでしょうか?
それは、あたかも「大阪府へ多くの”二重行政”の仕事が統合されて、ムダが減る」という誤ったイメージがバラまかれているからです。
(2)で見た通り、大阪府へ「統合」される仕事はごく限られており、むしろ「区」ができないので、5区の分だけ大阪市が「市町村行政」をするハメになったもの大切な仕事すらあります(消防、地域の都市計画、マンホールに至る下水道)。
あくまでも「大阪市の廃止・5分割」が主であることは、(3)(4)でみた楽観的な「効果額」の比較からですら明らかでしたね。
もし「統合によるムダの解消」があるのなら、それを推計に入れてるはずで、逆に「楽観的すぎる仮定」をする必要は生じなかったでしょう。
「統合の効果」が無くて困った大阪府市大都市局は、「粗い試算」で楽観的に非現実な条件を加味して、「お金が足りる・増える」という計算するしかなかったようです。

多くの市民の方々はこのような推計の計算まで見ませんし、「職員数」のトリックなど判らず、ダマされることとなっています。
単純に本質である「5区への細分化」を考えれば気付くことなのです。だからこそ「イメージ戦略」でゴマかそうとしているのです。

 

 

3)お金・職員数が足りないので、「今の住民サービス」は維持されない

もうお判りとおもいますが、「長期財政推計」の仮定が崩れれば、協定書の「住民サービスの水準を低下させない」という目標も崩れます。
もちろんこれは協定書の条件としているのではなく、「事務の承継」の留意点にすぎないので、「サービスの水準を低下させない」は法的拘束力はありません
サービス低下が明らかになっても、誰も訴えられませんし、大阪市は元にはもどりません。

そして、肝心なのは、「お金・職員数が足りなければ、住民サービスは維持されない」ということです。
だからこそ、橋下さんや維新は、「皆さんが使えるお金4000億円」と宣伝しているようです。まさか、足りなくなる恐れがあるとは言わずに。

よくニュースでは、高齢パス、プール、保険料などの行く末がどうなるか? テーマにされがちですが、1つのサービスだけならば、その予算を区長・区議会が優先するか、どうか?で変わってきます。
また、「大阪市が得するのか?大阪府が得するのか?」という議論も、「政治による意思決定」の議論なので、水掛け論になりがちです。

しかし、「府・市トータルで、お金の支出の方が今より増える」ならば、そんな1つ1つのサービスはともかく、とにかく、「今の住民サービスは低下しないと仕方がない」のです。

そして、長期財政推計(粗い試算)が、そんな答えにならないよう「楽観的すぎる仮定」を置いて計算されていることからも、実際はその恐れが非常に強い、との覚悟が必要です。

つまり、「大阪都構想」の公式は、

 

お金の収支が減 → 職員数は減らさざるを得ない → サービス低下

もともと、普通に考えれば誰でも気付く単純なことなのですが、「1つの政令市を廃止して、5区に細分化」するのが「都構想」なので、
・コストやロスが大きく生じ続ける(初期の庁舎とシステム”だけ”は橋下市長も認めてる)
・お金の「入り」は増えない
・何かを節約または処分または借金しないといけない
のは当然です。だからこそ、「長期財政推計」の楽観的な仮定ですら、「貯金の消費」「土地の処分」「新たな借金」で埋め合わせが必要となっていたのです。

住民サービスはお金が今より足りなくなるので、低下する ことを大前提に、「都構想」を判断していく必要があります。
ありえない楽観的な未来予想図をアテにすることは、まさにATCWTCやりんうタウンの「ベイエリア」開発した「過去の失敗」の繰り返しです。

 

4)「財政調整制度」が成り立っても、サービス低下

特別区になると、今の主な市税3つが一旦、大阪府に行って「交付金」として帰ってくる、という「財政調整制度」があるから、「大丈夫」というような誤った議論がなされています。

しかし、この制度は、「大阪府と5区それぞれ」の6者間のお金の分配の仕方を決めた制度にすぎません。ですから、今までみてきた「大阪府・5区トータルでお金が減る」場合も、減ったお金を分配する、というだけです。
「コストやロスで収支が悪化しない」ことを保証した制度ではありません。つまり、「財政調整制度が成り立つ」のは、「大阪府・5区トータル」でお金が増えても、減っても、「お金の分配」はする、というだけのことです。
「だからサービスは大丈夫」とか、「大臣が大丈夫と言った」というのは完全な誤解です。

ですから、
「財政調整制度は成り立つ」でも、「大阪府・5区でお金の収支は減るので、今より行政サービスは低下する」
というのが、普通に考えた、「大阪都構想」の未来予想図になります。

もちろん、その意味で、橋下さんが言ってる「大阪は変わる」「大阪は変われると信じている」というのはウソではありません。
そして、「悪く変わる」ことへの恐れ・備えをしない思想とは、すなわち、バブルの思想です。政治家になったばかりの頃の橋下さんのお考えとは違ってきているのかもしれません。皮肉なことに。

5)「過去の失敗」に向き合わず、「楽観的な期待・前提」に基づくのが「大阪都構想

なお「財政調整制度」や「都区制度」については、正しい意味で「政治的」に見れば、課税主体と使う機関が異なったり、府と各5区相互の利害調整というプロセスが生じてしまう、というデメリットは指摘できます。
また、圧倒的に収入が莫大に多い東京都の23区が都に3税の分け前を都に与えるという前提で実施されている制度なので、収入が足りない大阪では、逆に府が利害調整がさらに大変、というデメリットもあります。

こうした「利害調整」すなわち、政治的な意思決定は、府なら府全域の利害代表、区なら区の中の利害代表が、利害を主張・議論した結果、利益分配や投資がなされますから、利益分配は当然、「変わります」
つまり、今よりも増える地域・人と、減る地域・人が生まれることも、当然、覚悟しておくべきことです。
この「減る不満」を避けて人気を得るには「とにかく、全体がさらに豊かになる」という「楽観的な仮定・予想」を言うしかなくなります。
これが、過去のバブルや過去の失敗のときの「専門的な検討」「意思決定」の仕組みです。まさに、今回の「都構想」の「検討」とそっくりな状況なのです。

過去の失敗に学ぶべき、過去の失敗を繰り返さない、そんな橋下さんの主張は誰もが納得するものです。
しかし、そのためにこそ、過去の失敗の原因をちゃんと見るべきです。あいまいに「二重行政」とか「大阪市」のせいにして安心してしまうことこそ、「新たな失敗」の種をまき芽を育てることになります。
この「都構想」の楽観的すぎる仮定・予想は、その良いお手本です。

皮肉なことに、「都構想」「橋下さん」「維新の会」に期待している人の多くは、こうした「過去の失敗・意思決定」を繰り返したくない、と思っておられるのに、結果として、このうえなく「過去の失敗」と似た前提による「大阪都構想」に「賛成」しようとなさっておられるのです。
住民投票を間近にして、意図的にウソを重ねた宣伝が増えているので、ダマされる方が悪いとは言えませんが、心が痛みます。

(6) 「職員数」のトリックについて (人が減り、莫大なお金が増える?  仮定について)

緊急のお願い
もし「とにかく改革で
2700億円・4000億円もお金が使えるそうやから大丈夫!」と軽く思っておられる方は、まず、
(3) 都構想「協定書」や2700億円の「楽観的すぎる仮定」について (←クリック)をご覧ください。「大阪府市大都市局の発表資料」を直接読み解いて、中身を解説しています。

「職員数」の仮定については、重要なので、もうすこし、詳しくみてみましょう。

職員数は、「中核市並みのモデルで検証した職員体制」だ、と説明されています。
具体には、5つの中核市東大阪、高槻、豊中、尼崎、西宮)での、

総務省「定員管理調査」を基に計算したものです。
http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/19163/00131518/24shiryo04-02.pdf)

中核市並みのサービスを行うから、中核市並みの職員数で可能」という理屈です。
ただ、しかし、
この計算では、実際に、仕事をしている人の数とかなりの差が生じます。

 

1)
今の「大阪市のサービス(低下させないと言っている)」と5つの中核市のサービスの内容との比較していません

中核市の「支所」は、大阪市の区役所とは異なります。手続きサービスが主です。
 (区役所はご存知のとおり、全ての窓口サービスおよび、
  福祉サービス、保健所機能、
  また、災害時の防災対応・防犯、地域活動や常時の相談業務を全て備えています。)
・大都市・都心ならではの住宅・企業等の集積、都市・土木施設の整備・維持管理、
 浸水対策、福祉サービスのウエイト

など、違いは色々ありますが、大半、比較していません。


2)

中核市(や多くの中小市町村)では「定員」より遥かに多くの職員が働いています。

中核市では、職員数削減のために、やむをえず身分の不安定な「非常勤職員」「アルバイト」への置き換えを積極的に行っています。
なので「定員管理調査」では、実際の職員数より相当少ない「職員数」で行政サービスできているような計算になってしまいます。
・一方、大阪市は安定し継続した行政サービスとするため、中核市や中小市町村に比べて、「非常勤職員」「アルバイト」は限定的です。
・したがって、「中核市」の「定員管理調査」で「職員数」を計算すると、
 今の大阪市のサービスを維持するのには、相当、足りない「職員数」で
 計算してしまうことになります。
・その結果、
 「5区に分けても、職員を増やす必要無し→逆に減らせる=効果額が生まれる」
 という「仮定」が生まれてしまっています。

 

そもそも、
1つの政令指定都市を、5つの区に分けて、
かつ、
「サービスを低下させない」と言って、
かつ、
大阪府に並行移動する仕事を除けば、”統合”する仕事は微小
なのに、
「職員数」を増やさず、大きく減らせて、毎年、大きなお金が生まれる

という「仮定」は不自然なのですが、
その「仮定」の根本のからくりは、
この「定員」の計算による、「過小見積もり」にあるようです。

これは、主たる「効果額」(17年間で生まれる2700億円)の大きな部分を占め、
また、「必要庁舎面積」にも影響しますので、
「長期財政推計」ひいては「都構想」が、実際に成り立つかどうか?
の極めて大きな点になると思われます。

とても、深刻で重要な点です。

 

(参考)
高槻市人事室長の談話
「職員が2,486名ですから、3分の1に相当する数が非常勤職員として市の仕事に携わってもらっているということです。 それで特に市民課とか支所の窓口業務であるとか、国保、医療給付の窓口業務をそういった非常勤の方々にやっていただいていて、職員数を抑制しています。」

https://www.jiam.jp/melmaga/bunken/newcontents35.html

 

注)

「大阪の実情」として、加算されているのは、以下のもののみです

児童相談所
中核市の事務に、制度上、含まれていないため)

教育委員会事務局
(うち、「教職員人事」は中核市の事務に元々、含まれていない分

ただし教育委員会所管ではないものの、
大阪市の24区の区民センターや、クレオ大阪などは継続するにもかかわらず、
「社会教育等事務」はあえて人口割で算出して、職員数を削減

大阪市は社会教育法に基づく「公民館」としていないためと思われるが、
一方で、区民センター等の人員を別途加算はしていない)

 

・保健所
(5区で13人増程度

これで、現24区役所(24支所)の保健・福祉および環境指導・衛生監視、
および、本所の全サービスに足りる、との仮定。
飲食店・事業所が多い現状を反映し切れているか?は確認できない。
現在は、大阪市全体で「保健所」はルシアス1箇所で統合している。)

生活保護
(被保護世帯数を基に算出(算出式の内容は、非公表)
大阪市の被保護「者」は中核市に比べ極めて多く、
全国トップ(比較・比例すべき対象が無い)
   ↑本来は、
    現在の「大阪市の従事職員数と同数」は最低必要だが

 

 

 

 

「syokuinnsuu_syousai_copy.docx」をダウンロード (←右クリックで保存)

 

(参考)橋下さんが「きっちり計算した」「大臣も大丈夫と言った」と
    何故か間違って説明する17年間で2700億円、「長期財政推計」 の内訳
    = 大阪府市大都市局による「(仮定を置いた)極めて粗い試算」 (3)参照

「17kyougikai_tyoukizaiseisuikei_koukacost.xlsx」をダウンロード(←右クリックで保存)

 ・無理矢理「地下鉄」「ゴミ収集配送」の「効果」を積んでも17年間で400億円ほど
 ・莫大なのは「職員の削減」による「効果額」、、、ということになっている

Photo_7

Photo_8

(出典の補足)
総務省 定員管理調査」は、
「非常勤職員」はカウントしません。
例外的に「臨時職員」として勤務時間・勤務日が常勤職員とほぼ同じ者のみカウントしますが、この定義にあてはまる「アルバイト」はほとんど居ません。
たとえば実際には「3割が非常勤」と人事室長の談話にある「高槻市」でみても、この定義にあてはまる「臨時職員」は0人になっています。
 

総務省定員管理調査
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/c-gyousei/teiin/

・定員管理調査の調査対象の説明 (P5/66 (1P))
http://www.soumu.go.jp/main_content/000296532.pdf
(引用)
「(2)いわゆる「臨時又は非常勤の職員」は調査対象としていない。 ただし、次の要件に該当する「臨時又は非常勤の職員」に限り調査対象としている。
・一般職に属する臨時又は非常勤の職員で、その職名のいかんを問わず、
・勤務時間が一般職に属する常勤の職員と同様に定められている者で、
・その勤務した日(法令の規定により、勤務を要しないこととされ又は休暇を与えられた日を含む。)が、18日以上ある月が平成25年4月1日現在において12月を超える職員」
高槻市の結果を含む「第4表 職種別職員数(総職員)(北海道~沖縄県)」
http://www.soumu.go.jp/main_content/000328131.xlsx

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「都構想」の住民投票を、宣伝文句やスローガンでなく、中身でしっかり考えるために

緊急のお願い
もし「とにかく改革で
2700億円・4000億円もお金が使えるそうやから大丈夫!」と軽く思っておられる方は、まず、
(3) 都構想「協定書」や2700億円の「楽観的すぎる仮定」について (←クリック)をご覧ください。「大阪府市大都市局の発表資料」を直接読み解いて、中身を解説しています。

このブログでは、
今回の住民投票にあたって、
「何の」投票なのか? そして、注意すべきことは何か?
について、次のページで5点にまとめました。

(1)「大阪市の廃止」「特別区の設置」そして「そのやり方」の賛否を決める投票
(2)「宣伝文句」や「スローガン」を選ぶのではありません
(3)「楽観的すぎる仮定」に、用心が必要

(4)投票用紙には、「大阪市の廃止」と書かれていません
(5)1票でも多い方に決まってしまいます

その次からは、協定書の細かい内容に入って行きます。

でも、まずは、次のページをご覧ください。
ざっくりと全体のイメージがお判り頂けると思います。
また、何故、「都構想」が「判りにく」いのか? その理由も。そして、専門知識は駆使しなくても、素朴に湧く疑問について、どうなのか?を考えるヒントをまとめたつもりです。

橋下市長の「都構想」「二重行政」「改革」、
「新しい大阪がよいか?」「ムダを許すのか?」など、
イメージは良いが、実際の中身がはっきりしない宣伝文句やスローガンに流されずに。

  では、都構想の「中身」について、一緒に見て行きましょう。

(5) 市の細分化のコスト・ロスに関する政府調査会の公式見解、や「総務大臣意見」について

1)調整ロスや分割コストが増大するはず、という公式の指摘

大阪市を5つの区に分けて、各々の庁舎・施設で各々の区長・区議会の判断に従って仕事をし、各々が独自の利害によって意見や意思決定をする、という「都構想」。
なのに、「より多くのコスト」や「お互いの調整手間が増える」ことはなく、「膨大な効果額があがる」というトリックは、(3)2700億円の楽観的すぎる仮定(←クリック)で見てきました。
この調整ロスや分割コストが増えることや、区に分割することのリスクは、たとえば、総理大臣の諮問機関である「地方制度調査会」の答申でもはっきりと指摘されています。

地方制度調査会
「大都市制度の改革及び基礎自治体の行政サービス提供体制に関する答申(平成25年6月25日)」
・大都市地域特別区設置法に基づく特別区の設置に当たっては、・・・
また、長年存在してきた指定都市を特別区に分割することにより、分割される事務の処理に係る費用や、特別区間や道府県と特別区の間の調整に係る費用が増大するといった懸念には的確に対応するよう留意すべきである。

特別区において処理すべき事務が多いほど、また、特別区の規模が小さいほど、分割される事務の処理に要する費用が増加するとともに、特別区の間で行うべき財政調整の規模が大きくなることに留意すべきである。

せっかくの指摘も、「都構想」や「協定書」はほぼ無視しています。
「地方制度調査会」答申で指摘されたリスクは、都構想では「無し」とされ、職員数は増えるどころか、大幅に削減し「効果」を生む!と仮定したうえで、「協定書」がつくられています。(なので、主に庁舎建設とシステム改修コストのみ)

 

2)総務大臣の「意見無し」の意味について

なお、協定書は総務大臣から「特段の意見は無し」とされ、「総務大臣が保証した内容」のように、橋下市長は説明していますが、
もちろん、これまでにみた通り「2700億円が改革によって生み出される!」とは全く書いておらず、「粗い試算で、相当の幅をもって見る必要がある」という前提での資料として大臣は見ています。

そのうえで、協定書の財政調整にあるとおり、「国から大阪が頂くお金は今より増増やさない」「大阪のなかで納める」「区が足りない場合は、区が借金したり財産を売ったりする」と約束したので、「特段の意見は無い」としていただいたわけです。
だからこそ、大阪府からの条例による交付税を含めた5区への財政調整は「当面」と協定書に書いてあるのです。
大臣からみれば、あくまでも、大阪市民が、デメリットもある「都とみなす」制度に、自らの意思で乗りたい、とお願いに来た、だけなのです。
最終的には、東京都・23区と同じ制度、つまり、「3税の再分配のみで5区はやり繰りし、足りなければ、足らずは5区でガマンしあう」(都(府)からの交付税を基にした加算は無い)という前提がある「制度設計」、それが「協定書」です。)

3)大阪市廃止・5区設置 と関係の無い「効果額」について

なお、2700億円が、何らかの形で、仮に生みだされる(借金や貯金消費も含めて)としても、地下鉄・ゴミなどの「施設・事業の再編」は、「大阪市廃止する・しない」の是非とは別に、個々の施設や事業について判断されるものなので、「効果額」に含めるのは、市民の誤解を招く、という指摘もあり、大阪府市大都市局も「そもそも、4つの区割り案比較のための計算であり、大阪市のままで可か不可かを論じる資料ではない」との趣旨を答弁しています。
これらを除くと、よく「反対する野党」が言っている「コスト600億円に対して、効果額は1億円しかない」ことになります。

第11回 大阪府特別区設置協議会(平成25年12月20日)
(長尾秀樹委員)
わかりました。また、委員間協議でやらせていただきます。
次に、再編効果、継続的効果のAB項目関連で、市政改革プランに基づくものもそうですが、そもそも我々は入れるのはおかしいと思っておりますが、仮に入れるとして、もう既にパッケージ案で想定した効果の見込み額の前提が崩れているものがあるというふうに思っておりますが、それが再計算されていないのはおかしいと思いますが、この点についてお聞きをいたします。

(府市大都市局松阪広域事業再編担当課長)
今回の財政シミュレーションは、区割り試案4案を比較検討するため、パッケージ案をもとに粗い試算として作成したものでございます。
AB項目関連の効果額につきましては、前回の法定協議会の時点で試算できました地下鉄民営化の効果額の再試算後のもの、それから一般廃棄物の焼却処理事業に関する一般財源分の効果額、これらを算入いたしました。これらを反映しまして、効果額を出しまして、それをもとにシミュレーションを行ったものでございます。
・・・
(山口大都市局長)
精緻なものをつくろうとすれば、我々、最初にお願いしたとおり、やはりある程度予算編成を経るとか、取り組みというものをしっかり見ていただいて、出させていただきたいということでしたけれども、やはりこの協議会の中で、4案を絞り込んでいこうということになれば、非常に粗々でもいいので、傾向というか、細かい数字というよりも、やはりどういう7区案、5区案でトレンドを示すのかということを、見た上でご議論したいということで、一定の時期を切らせていただいて、試算をさせていただいたということでございますので、この点はご理解をお願いしたいと思います

平成26年9月、9~12月定例会常任委員会(財政総務)-10月09日
(佐々木哲夫委員)
・・・
まず、二重行政の解消についてということで、二重行政の解消によって浮いたお金を大阪の成長のための投資に回すと、そのようなのが都構想の議論でございます。
政令指定都市特別区に移行しないと解消できない二重行政というのは具体的にどのようなものがあるのか、また、その二重行政解消の効果額は幾らなのか、まずお伺いします。

(林大阪府市大都市局広域事業再編担当課長)
・・・
法制度上、政令指定都市特別区に移行しないと解消できないものといたしましては、例えば、府市統合本部のAB項目では政令市に設置義務のある精神保健福祉センターがございますが、効果額につきましては一元化された際の体制等が現段階では明らかでないため、算出してございません。以上です。


4)必要となる大きな新庁舎は、いつ、どこに建て、それまでどうするのか?

「庁舎」は、各特別区の中のちょうどよい場所に、ちょうどよい大きさの敷地が無いと建てられません。
ただ、庁舎の中身や大きさや場所は、まさに「特別区」の区長・区議会・住民が民主的に考えて合意して決めることなので、どうなるかは未定という前提で、住民投票をする必要があります。

それまでは、ほぼ今の大阪市の各部局と同じ場所で、5区同居してサービスをし続けることになります。

(これらは、第16回協議会(←クリック)で、橋下委員や新田谷委員から明言されています。)
そのため、それまでの「仮移転などのコスト」は一切想定していません。

なお、そうした「場所」「規模」などが決まったあとで、「計画・設計~工事」の期間が「概ね5年」はかかる、ということです(これは「工程表」にやや紛らわしい書き方ですが示されています)
「概ね5年」には、そうした場所・規模などを検討して決定する期間は含まれていません。
また全部の区の庁舎が揃わないと、ずっと「居候」状態の区が出られません。このことも、覚悟しておくべきでしょう。

 

 

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(4)大阪都構想まるわかりブックの「4000億円(大阪府市大都市局発表)」

要点
1)4000億円は、「5区」の楽観的な2700億円に大阪府の「粗い試算」を足しただけのお金 (アテにしてよい、と住民投票を前に市民に言える金ではない)
2)「ムダの解消で生まれるお金 4000億円」は、5区と同じくウソ
3)「みなさんが使えるお金 4000億円」断言は、5区と同じくウソ
4)大阪府への統合の効果は、あったとしても、わずか
注)「楽観的すぎる仮定」の内容は(3)(←クリック)をご覧ください。

1)4000億円は、5区と大阪府の「粗い試算」を足しただけのお金
大阪維新の会から0億円どころか「4000億円使える」とのきれいなカラーチラシが、これも「大阪府市大都市発表」と、維新の会から各戸に配布されました。 「大阪都構想まるわかりブック」というものです。

この4000億円は、前のページで見た5区の17年間の「2700億円」に、大阪府の「1300億円」を足したもの。つまり、「相当の幅をもって見るべき」「粗い試算」の数字を足し合わせたものにすぎません。
肝心な「粗い試算」であることは全く言わずに、御自分の部下の「大阪府市大都市局」に計算させ発表させて上で、他人事のように大阪府市大都市局発表」と、特別な専門家の太鼓判のような誤解を招く宣伝をしているものです。
例えれば、社長さんが、部下に最大限、楽観的に粗く見積もりさせておいて、顧客に向かって、「これはウチの総務部が弾いた数字だから、太鼓判だ!」と胸を張る、というのは、しっかりした企業ではありえないことです。


2)「ムダの解消で生まれるお金 4000億円」は、5区と同じく
ウソ

この1300億円の内訳も、まず「ムダの解消で生まれるお金」というのはウソです。
大阪府の「収支」だけを見たとしても、次のグラフの通り、
景気回復をアテにした税収の自然増=662億円
は、「ムダの解消や改革によって生み出されるお金」ではありません。

Photo_2
(5区の「収支」に含まれている「税収増」は、5区が概ね財源不足になっており、その「下支え」になっているので、見かけ上、表れてきません。)

3)「みなさんが使えるお金 4000億円」断言は、5区と同じくウソ
アテにできるかわからない「粗い試算」であることを隠し、「みなさんが使えるお金」と「都構想」の保証金のような説明をするのは有権者の皆さんの誤解を招くウソと言えるでしょう。

さて、この大阪府の「粗い試算」の残り654億円の内 、アテにできるかどうか怪しく、「ムダの解消」なのかも疑問である「地下鉄民営化の税収」35%(323億円)は、5区の場合ほど大きくありません (府税として徴収する本来の市税=固定資産税・法人市民税の増収分を区に分配する率により変動しますが)。
ほかは、人件費抑制での効果をアテにしながら「最高の医療を実現」と言っている「病院民営化」のお金が目立つ程度です。

主は「職員の削減」が効果額の48%(458億円)で、府が受け容れた職員が今の大阪府全体の職員削減率の将来目標と全く同割合で減る、と仮定した人件費削減額です。
しかし「大阪府へ移管する事務に必要な職員数」なのに、いきなり一律に減らせる、との仮定は少々無理があり、これもアテにしてよいお金ではなく、あくまでも「粗い試算」です。
なお、今の大阪府でも全部署一律の割合で削減するのではなく、重点的に縮小削減する部局と、増える部局もあります。大阪府の目標削減率による単純に業務内容を無視した計算は「統合」や「二重行政の解消」の効果の検証ではなく、単なる「仮定に基づく試算」です。 (「効果」の内訳を見るために、%割合や金額は、コストや交付税の減額分などを差し引く前の「効果額」でみています。) 
注)5月15日に次のグラフは修正しています。ごめんなさい。

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このように、5区の2700億円に、「大阪府の1300億円」をわざわざ足した「4000億円」は、楽観的すぎる「粗い試算」によるお金であり、決して「アテにしてよいお金」ではありません

それでは、改めて「5区+大阪府=4000億円」と言われるお金の内訳グラフをみてみましょう。これは「効果額」「生みだされる額」ではありません。「期待する自然税収増」や5区の「貯金の消費」「資産の処分」などもアテ込んだ「収支」額です。そして、失われる地下鉄黒字5000億円の影響は無視しています。

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「長期財政推計「収支」.xlsx」をダウンロード
しかし、何大阪市を廃止して、困難な改革に立ち向かおうとしてるはずの橋下市長は、何故、わざと有権者の皆さんが誤解して油断するような表現をするのでしょう?しかも、言い訳の準備のように、他人事のように「役所の専門家が難しい計算で太鼓判を押してくれた」という表現をとっておられるのでしょうか?
「都構想」が成立したとき、こんなお金をアテにしてたら、大阪市民と大阪府民は実際に困るのが、分かっているのに。


4)大阪府への統合の効果は、あったとしても、わずか

先ほどの金額と割合からお気づきの通り、大阪府の「粗い試算」での「楽観的な推計」をもってしても、「大阪府全体一律の職員削減」を除けば、大阪府の「効果額」は5区と同じく「地下鉄民営化による税収」と「ゴミ収集民間委託による税収」がほとんどで、しかも、大都市の予算規模からすると、わずかしか見込めません。
しかも、逆にこれら2事業を受ける企業があるとしたら、その企業は、5区と大阪府(と国)に一手に、これほどの税金を払い続けた上で経営することになる、という想定です。

「2(2)」で、大阪府への仕事の「統合」はごくわずかで、移管も並行移動か、却って混乱・ロスを生むようなものがほとんどであることを見てきました。
このことは、この楽観的な長期財政推計の計算ですら、ある程度、傾向が表れています。次のグラフをご覧ください。注)5月15日に次のグラフは修正しています。ごめんなさい。

 

 

 

Photo_2

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「長期財政推計(コスト&効果).xlsx」をダウンロード

このように楽観的な「長期財政推計」ですら、大阪府での「効果」はとても小さく、財政規模からみたらさらに小さいものです。

イメージで、「強い大阪府」「大阪府へ統合」と言われ、「だからムダを無くし、4000億円を生みだす」と言われると、誰しもが納得してしまいます。
しかし、このように、ものすごく楽観的な計算をしても、なお、「大阪府」への「統合」の効果はほとんど無く、実際の仕事も並行移動するか、無理矢理移すものが大半なのです。

「都構想」の本質は、「1つの大きな市を無くして、5つに細分化する」ことです。
繰り返しになりますが、これはそもそも、今回の法律の第1条にも明記されてることです。

そして「都構想」は、その「細分化」のコストやロスをほとんど無視して、「お金が生まれる」と言っているものです。

しかも、それは実は「粗い試算」であり、非現実なほど楽観的な仮定に基づいていることを橋下市長はよくご存知です。
なのに、市民の皆さんに「アテにしてよいお金」というイメージを説明なさる時は、必ず「大阪府市大都市局発表」とか「大阪市がきっちり計算した資料」と、政治家の及ばない専門家の精緻な検討した数字であるかのような言い方をしておられるのです。

 

 

 

 

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(3) 「都構想」そのものが成り立たない?~誰が考えてもおかしい効果額2700億円の「楽観的すぎる仮定」

橋下市長の説明の「ムダの解消で生まれるお金2700億円 」の内、
 ・750億円は、
借金と資産処分(貯金と土地)
 ・残りの大半は「楽観的すぎる仮定」に基づく「粗い試算」
にすぎない

1)税収が拡大 と仮定
2)「貯金消費」「借金」「資産の食いつぶし」で区が自分でまかなう750億円を含む
3)職員数は5区細分化でも増は見込まず、逆に「減る」と仮定
4)ほぼ「地下鉄・ゴミ」が頼り(市廃止・分割と関係無し & 楽観的な仮定による)

●地下鉄の場合
・現在の毎年300億円(17年5000億円)の黒字の放棄は、計算に入れていない
・企業の増収増益項目の想定に抜本的なものが乏しく、楽観的
・民営化するのに、肝心の政治・利権介入は増える
●ゴミ収集・配送の民間委託の場合
・安価に「民間委託」により浮く金と、民間の増益からの税収アテにするが、委託条件そのものが、業界への調査でも困難とされ、実現メド無し

 「協定書」は「役所の仕事の分担」を決めるものですが、1つの大きな政令市を5つに細かく分けるので、調整ロスやコストがかかるはずです。 (← よく考えたら誰でも気付く当たり前なのですが。例として、総務省付属機関の答申での指摘は(5)に)
そこで、
 A:「都構想」をやった方が、お金の余裕ができるか?(サービスが向上するか?)
 B:少なくとも、今のサービス水準は落とさず、破綻しないで居られるか?

の2つを本来は検討するために、「一定の条件」を置き、「相当の幅を持って見る必要がある」という粗い試算が「長期財政推計」です。

この「粗い試算」によれば大きい「効果額」=17年で2700億円が生まれるとしています。しかも、橋下市長は「粗い試算」であることを言わず、「きっちり計算」「総務大臣がチェック」とまで誤解を招く説明をしています。
しかし、結論からいえば、この説明は不適切で、
 結果A:「都構想」しない方が、お金の余裕ができる
 結果B:今のサービス水準の維持すら難しい

となります。それは、
 理由A:「都構想」する・しないに関係無いお金を「効果額」としている
 理由B:相当「楽観的すぎる仮定」を置いている

ためです。ですので、「サービスは低下する覚悟」が必要です。

以下、順番に見て行きましょう。

1) 税収が拡大 と仮定

協定書の制度の仕組みでは、
「収入」については、「5つの区」と「大阪府」の合計は、ほぼ「今の大阪市」と「大阪府」の合計と同じで、「分け方」が変わるだけ、という制度になっています。
「5つの区」になって費用が増大しても、「大阪府」と合わせた「収入」の合計は同じ、という制度です。
ただし、この「粗い試算」では、今後税収が増えるという楽観的な仮定をしているようです。

バブル期など昔ながらの「経済成長期」のやり方にならったもので、アテが外れれば破綻の恐れがあります。
(計算式が示されてませんが、毎年100億円も増える、とアテにしているそうです)

この税収増が「財政調整できっちりお金は分配する」と言っている前提のものです。ただし、税収増は「長期財政推計」では明示されていません。もし毎年100億円の税収増のアテが外れたら、17年間で900億円分状況が悪化し、大阪府がお金を持ち出しが増えることになります。(国からの交付税が増えるので丸々ではないですが)

つまり、結果B:今のサービス水準の維持すら難しい の要素となります。

さて、次からは「長期財政推計」の表で、しっかり確認できる項目になります。

2)「借金」「資産の食いつぶし」で区が自分でまかなう750億円を含む 
でも、税収が順調に増加すると仮定しても、実はまだお金が足りません。
そこで750億円ほどを「財産売り払い」「基金取崩し(貯金を使う)」「新たな借金」という奥の手を使っている額750億円も、橋下市長が「17年間で改革による2700億円!」とおっしゃるものに丸々含んでいます。

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「j260723.xlsx」をダウンロード (←右クリック)

これらの借金や貯金など、資産の食いつぶしは、資産が思い通りの値段で売れるならば、「都構想」してもしなくても可能には違いないので、破綻リスクには一応ならないでしょう。ただし、「都構想」コストのための苦肉の策です。つまり、
 結果A:「都構想」しない方が、お金の余裕ができる
となります。もちろん、改革で「生みだす」のでなく、大阪市の資産・資金を食いつぶして得るお金ですが。

しかし、何故、橋下市長は、こんな誰にでもわかる単純な大切なことを「改革による効果」と決め手のようにおっしゃり、正直に説明しないのでしょうか?
ご提案が粗く、稚拙であったとしても、市民に良かれ、と思っているのなら、正直に説明すればよいのに、と思います。

 

3) 職員数は5区細分化でも増は見込まず、逆に「減る」と仮定

大きな政令市を5区に細分化し、かつ、窓口サービス等は維持する、と言いながら、 「人手は増えない、逆に減る」と仮定しています。
これにより、人手コスト増はゼロで、極めて膨大な「効果額(儲け)」が出ると仮定され、実に17年間で1570億円も生みだす、としてアテにされています。

少し考えれば、誰もが気付くと思いますが、これも不自然な「超楽観的な仮定」です。(国の「地方制度調査会」答申でも「特別区設置の場合」として指摘の通りです)
では、そんな「超楽観的な仮定」とはどんな仮定なのでしょう?
それは、支所や福祉などサービス水準が異なり、パート・アルバイトを多く用いて職員数を減らしている「中核市」の職員数だけを数字として使う、という仮定です。
単純にみても、パート・アルバイトが中核市で多い分は計算に入れないので、「人が減らせる」計算になります。 (下記の「解説」または「2(5)」「2(6)」を参照下さい)

なお「職員数が増えない」としたおかげで、庁舎コストも想定する庁舎規模を小さくできるので、もし職員数が増えるなら、庁舎コストも増えることになります。

 

つまり、「人手コストの増は無し。膨大な削減額が生まれる」とし、都構想全体で、増える主なコストは、ほぼ「庁舎整備」と「システム改修」のみと仮定して、小さいコストに見えるよう計算したものです。 (市長が説明する「イニシャルコスト600億円」はこの額です。)

この仮定には無理があるので、結果B:今のサービス水準の維持すら難しい となります。
また、大阪市でも職員削減は行っており、「5分割」するよりは職員削減は可能ですから、
 結果A:「都構想」しない方が、お金の余裕ができる ともなります。

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4)
ほぼ「地下鉄」と「ゴミ」が頼りの「効果額」
(市廃止・分割と関係無し & 楽観的な仮定による)

さらに「事業の売却・民営化」により「生まれるはずのお金」をアテにしています。これは、本来、各事業毎に条件や目的を吟味して判断すべきで、
 A:「都構想」する・しないに関係無いお金を「効果額」としている
ものにあたります。
したがって、 結果A:「都構想」しない方が、お金の余裕ができる となります
(=「都構想」するためのコストがかからないので)
といっても、「地下鉄の民営化」「ゴミ収集・配送の民間委託」の2つの事業からの「効果額」予想がほぼ全てです。そして、また、これらも「楽観的な仮定」に基づいて試算されており、そもそも、本当に、そんなお金が生まれるのか?について既に疑問があります。

この場合、「都構想」と関係の無いお金を算入しようともアテにできないので、結果B:「今のサービス水準の維持すら難しい」 の要素となります。

●地下鉄の場合

・毎年300億円の黒字の放棄を計算に入れていない
大阪市が現在得ている毎年300億円の地下鉄の黒字は民営化によりゼロになりますが、試算では無視し、ただ固定資産税等が増える額を「効果額」としています。

・企業の増収増益項目の想定に抜本的なものが乏しく、楽観的
民営化計画(←クリック)をみれば判るとおり、「スピーディ」「外部人材」「シナジー効果」など具体性を欠くスローガンや、安価な労働力の調達をアテにするとともに、本業でなく「新規事業」での儲けをアテにするという、過去の失敗事業の教訓を無視して「民営化による効果」としている状況です。
粗く考えても、民営化すれば、企業側から見れば、市税・府税・国税を新たに支払い、かつ、日本最古級の御堂筋線などの未来永劫の維持管理更新費用を引き当てる必要があるなど、劇的に今より黒字が増える、ということが容易でないことは、想像に難く無いところです。
地下鉄の老朽化・維持更新コストについては、NHK どうする地下鉄”老朽化”(←クリック)にも全国・御堂筋線の実態が報道されています。今後、こうしたコスト・リスクは増大する、と考えるのが「買収」企業からみれば常識でしょう。

・民営化するのに、肝心の政治・利権介入は増える
良くも悪くも民営化すれば、企業は企業の利益を最優先するので、不採算路線は廃止されたり、削減されたりする恐れがある一方、ニーズが少ない路線建設・経営は行いません。
これは、政治家が圧力をかけても、さすがに譲れません。
ところが、橋下市長や維新の会は、「市域を越えた府内・京阪神への地下鉄延伸」を主張し、「都構想」大きなメリットとしています。
ですから、大阪市営地下鉄を買収しようとする会社は、採算性に疑問がある路線の経営を強いられる覚悟が必要です。また、企業破綻リスクも増大します。
さらに、仮に地下鉄のトンネル等は「公有財産」とし、延伸部分の建設費用を区や府が負担するとすれば、「効果額」に含んでいる「固定資産税」は大幅に削減する必要があります。

・(参考)東京メトロについて (←会社概要はクリック)
民営地下鉄のお手本として橋下市長や顧問の学者が挙げる東京メトロ株式会社」の株主は財務省(53.4%)・東京都(46.6%)の2者のみの超優良「公有企業」。
「民営化のメリット」の「実例」と強弁する説得力に乏しい。

 

●ゴミ収集・配送の民間委託の場合

こちらは、文字通り、今、大阪市がやっている家庭・一般ゴミの収集と配送を、民間業者に安く委託したら、お金が浮く、ともくろんでいるものです。

地下鉄の「民営化」もそうですが、今後も長年にわたり毎日毎日続けていく必要のある仕事について、役所や学者が、「高く売ったり、安く頼みたい!」と思った通りに、「民間」が引き受けてくれる、という「想定」は、自分勝手で楽観的に過ぎる面があります。
悪い意味で「役人的」と言えるでしょう。一般に「民営化」を進めるのは「改革派」というイメージかもしれませんが。

もちろん、全ての家庭ゴミの収集・配送は、ラクな仕事でも、働き手が簡単に集まる仕事でもないし、「儲かるオイシイ仕事」でもありません。

大阪市では、もう2年も近く前に民間業者への調査(マーケットサウンディング)を行い、「安く委託したいので、ずっとしっかりひきうけてほしい」という呼びかけしました。
http://www.city.osaka.lg.jp/kankyo/page/0000239201.html(クリック)
しかし、比較的無難な答えをしても差し支えの無いアンケートの答えですら、大阪市の委託の条件で安く仕事を引き受けてずっと続けていくのは難しい、ということが既に明らかになっています。
やはり、ただ「民間業者を安く使って、お金を浮かせる」というのは甘いようです。それなのに、「民間業者に安くヤラせる」ことでの莫大な「効果額」(17年間で1200億円!)をアテにした「粗い試算」になっています。

このように、ゴミ収集・配送や地下鉄など、「都構想」と関係の無いお金を算入したとしても、アテにできないことになるので、
結果B:「今のサービス水準の維持すら難しい」 ということになります。

ハッキリ言えば、「都構想」は、財政的に府・市まとめて破綻する恐れがある、ことになります。

 

 まとめ~ 橋下市長は、何を2700億円とおっしゃっているのか?

以上のとおり、での「改革による2700億円」の内訳は、
1)税収が17年で900億円伸びる?と仮定した収支の累計30億円
   → 不足すれば、丸々、大阪府が負担
2)借金や貯金消費・資産売却などで区が自分でまかなう750億円
   → まったく改革と関係無い「お金の工面」、それも民間が言い値で買ってくれてこそ

3)職員が減らせると仮定で1570億円
   → 「5区に分割するのに、職員減る」トリック →下記解説or(5)(6) 
4)地下鉄民営化で1500億円 (市が得るはずだった黒字5000億円の減は無視)
  ゴミ収集の安価な民間委託で1100億円
  その他16項目で1100億円
  合計から、交付税減額や庁舎・システム改修費など3300億円を差し引き400億円

以上を合計したのが、ざっと、2700億円になります。

では、この中で、アテにできそうなお金はどれでしょう?
1)3)4)は仮定が楽観的すぎますし、はるかに巨額の黒字放棄を無視したりしています。
また、3)職員数はむしろ「都構想によるコスト」の発生を覚悟すべき項目です。
そして、2)は単なる資金・資産の食いつぶしにすぎません。
4)の各事業は、事業毎に最適な方法をきっちり検討すべきもの。ただ単に「都構想賛成なら賛成しろ!」というものではありません。主要な地下鉄・ゴミだけでも、上に示した通り、根拠も仮定も粗いものです。
Photo_6

 「長期財政推計 ”効果額”の内訳」をダウンロード(←右クリックで保存)

では、この中で、「都構想」しないと生まれないお金はどれでしょうか?
コストは丸々かかります。そして、職員の「増」のお金も実際にはかかることでしょう。
しかし、「都構想」しないと生まれないお金はありません。4)の全ての事業が丸々利益が出ると仮定した上で、「都構想賛成なら皆賛成!」という論理での乱暴な主張に過ぎません。

このように「都構想」という粗い話を無理矢理な仮定を置いて進めようとすることで、個々の事業や政策のきちんとした検討・見直しが、逆に進まず、または悪化するような「改革」に迷い込む、そういった懸念も生じます。


以上のことは、すでに「大阪府市大都市局の公表資料」や「大阪市の資料」「総務省の地方制度調査会の資料」などで明らかになっているものですし、橋下市長は、よくご存知のことです。
大阪市民にとって、実は大阪府民にとっても、とても大切な住民投票です。
橋下市長は、ぜひとも、きっちりと説明してフェアに住民投票に臨んでください。でないと、本当に「ダマした」ということになります。また「僕は知らなかった、大都市局の資料を信じてた。」などとは言えないことは、ここにはっきりと申し上げておきます。
本当に大阪のことをよくしたい、という思いは本物であるのならば、勇気を出して、本当のことを。
よろしくおねがいします。

 

解説)職員数・人件費 (根拠は、「2(5)」「2(6)」

、「大きな1つの市」を「サービスそのまま、区役所の箇所数もそのまま」でいながら(「政党のビラでは「さらによくなる」とまで言っていますが)、

5つの区(市のようなもの)に分けたうえで、なお、
「職員数はトータルで今よりも減らせて、お金が毎年浮く」という不自然な仮定は、大まかに言えば、

ア)近隣の中核市5市の「アルバイト・非常勤などを除いた職員数」の平均を基にする
中核市ではアルバイトを多く雇うことで職員数を減らしている場合があるが無視して、中核市並みに職員削減が可能とする)

イ)実際に現在の大阪市の仕事に従事している職員数は無視

ウ)現在の大阪市と5市とのサービスの質・内容の違いは無視

という仮定のためです。  (パッケージ案 「職-14」)

 (ほか、ただし
  ・中核市が制度上行わない「児童相談所」「教職員人事」の人数は割増
  ・「生活保護世帯数」が多い分は割増

 

  ・「社会教育関係」はさらに減らす などの修正あり)

本来なら、「中核市」の例を基にするならば、
まず、「大阪市の各仕事内容と人手」と「中核市の仕事内容と人手」を比較すべきです。
所得水準や高齢化などの違い、施設の老朽化・規模などの維持管理の違い、それに中核市の「支所」と大阪市の「区役所」の違いなどがあるためです。

また、中核市大阪市と違い、アルバイトや非常勤職員を増やすことで職員数を減らしているので、そのまま計算したら、実際の従事している職員数より相当、少なく計算されてしまいます。
このことにより、現在、アルバイト・非常勤が少ない大阪市の職員数より減らしても、なぜか小規模分割した5区運営が可能、という計算が成り立ち、「効果額」に上げられているものです。
「効果額」を生みだすとされている人件費には当然、「中核市並みのアルバイト人件費」は算入されておらず、必要庁舎面積にも、「中核市並みのアルバイト職員も収容する面積」とはしていません。

ですので、真に中核市並みの「人件費」「庁舎」とするならば、人件費コストは「推計」よりも増大しますし、庁舎コストも増大することになります。

 

 

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(2)「強力な大阪府」になるのか?~今の大阪市から、大阪府に移る「仕事」

(2)今の大阪市から、大阪府に移る「仕事」

大阪市がやっていた仕事の一部は、大阪府がやるようになります。
どんな仕事が大阪府に移るか、と言うと、

「今までは大都市(政令市)だからやってた仕事」
特別区に分けるのは不適当」または
「他の市町村の範囲は、大阪府がやっている」 などの仕事です。
(なお、分類は、このブログで理解しやすくするために整理したものです。

ア)普通は市町村の仕事だが、「区」では不適当・できないもの
・土地利用の規制(都市計画)
・消防(市内の消防・救急)注)橋下市長は「都になればハイパーレスキューができる」という説明をしますが今の大阪市も備えています。名前が特別高度救助隊と言い同じものです。同じ名前にしたいなら今でもできます。
・下水(雨水・汚水管、マンホール(巨大な「流域下水」以外全て))
・市町村税の7割程度の課税・徴収

(固定資産税2680億円、法人市民税1250億円、都市計画税540億円、
事業所税250億円←→ 大阪市6420億円(473,016/641,870百万円:H25決算ベース)

イ)普通の市町村は自分でもやるが、大阪府のみがやる事にしたもの
・現市内への先端産業・観光客の誘致
・現市内のイベント実施
・大きな公園(大阪城・天王寺・長居・難波宮)の維持管理

ウ)「政令指定都市」廃止により、大阪府がやるしかないもの
・港の運営管理・整備
府道の管理
・大規模施設の管理運営
・教職員の給与支払

エ)大阪市の施設を、大阪府所管にするだけ(場所も箇所数もそのまま)
中央卸売市場
・市立大学(病院も)
・市立高校(主に商業・工業高校)
・環境科学研究所

オ)大阪市の施設を廃止して、大阪府の施設のみで仕事を行うことにしたもの
・精神保健センター

これらのほか、大阪府で行わず、5つの各区ではできない仕事は、

カ)大阪府に移管せず、5区共同で設置する「一部事務組合」で実施
(注:5区合議なので機動的な意思決定(経営方針・廃止等)に適さず)

・市立中央体育館(あれほど「二重行政」とヤリ玉に挙がっていましたが)
泉南市内にある墓地
・保険、システム管理、水道事業など

これらから見ても、「強力な大阪府」になる、というよりは、「1つの市を廃止し、5つの区に分ける」ために、区でしにくい仕事を無理もしながら割り振ったことがわかります。
大阪府」は、「統合されて強力」にはならず、ただ大阪市限定の仕事とお金(財源)をいくつか、ほぼそのまま引き継ぐだけです。
強力にならないどころか、5区内だけ、純然たる市町村事務をたくさん引き受けることになっています。

「強力な大阪府」にならない事は、財政上のお金での効果(4)大阪府統合の「効果」?(←クリック)でも、ハッキリ判ります

「職員数」で見てもわかります。次の表をご覧ください。

大阪府」に移管・譲渡される業務 (H260723協定書案「資料1」およびパッケージ案を参考に作成)

Photo_2

「kouikijimusyokuinsuu.xlsx」をダウンロード (←右クリックで保存)

大阪府に1本化・統合される、と言える仕事は、せいぜい「観光・文化」「成長分野の企業支援」程度で想定している職員数も全体からみればごくわずかです。そして、これらの仕事の分は「5区は人もお金も要らない」と仮定してます。(普通の市町村はこれらの仕事も行いますが、5区は府に任せっきりにすると想定してます。もし自らやるなら、他のサービスを削る必要があります。

ただし、他の市町村なら全て自分で行ってる仕事(消防、下水道(大幹線以外の無数の下水道・マンホール)、都市計画(用途地域)、固定資産税・都市計画税・法人市民税の税率や課税)など)を、5区内だけ、全く不慣れな「大阪府」が直接行うことになります。

そうなると、当然ロスや調整手間が予想され、職員も多く必要となりますが、それらは無い、と仮定しています。(こうした点も、「都構想」「協定書」の前提が「楽観的すぎる」点です。)

 

このように大阪府に事務が移っても、「強力な大阪府」にはならないのです。 

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2.協定書の内容  (1)5つの特別区をつくるって?

2.協定書の内容

(1)5つの特別区をつくるって?

①そもそも「特別区」って何?
協定書の「特別区」は、今の大阪市の24の「区」とは、全く別のものです。

1)今の大阪市と24の「区」

今の大阪市は「政令指定都市」といって、大都市ならではの自治体です。
おおまかにいえば、大阪府に余り頼らず、独自で行政サービスができるものです。

今の大阪市の24の「区」は、そんな大都市がきめ細かいサービスをするための大阪市役所の中の組織です。あくまでも、大阪市という強力な「政令指定都市」の中の組織です。

そして、今の大阪市は「大阪市長」と「大阪市議会」が、大阪市のお金の使い方やサービス内容、税金の課税や規制などのルール(条例)を決める責任を負っています。 (注:正式名称は「大阪市会」ですが、ここでは議会であることを示すため「市議会」とします)

 

2)協定書の「特別区

一方、協定書は、「大阪市」そのものを無くし、今の大阪市の範囲を5つに分けて、5つの「市のようなもの(特別区)」を作ろうとするものです。

5つの「特別区」は、それぞれ選ばれた5人の「区長」と5つの「区議会」が、それぞれの「区」の税金の課税や、それぞれの「区」にだけ通用する規制とかルール、罰則などの条例を決めて、それぞれの「区民」向けに限ったサービスをしようとするものです。

そのかわり、大阪市全体に責任を持つ市長や市議会は無くなり、大阪市民全体を対象とするサービスや条例は無くそうというものです。

ですので、今の大阪市内では、5つの「特別区」毎に、別々にサービスを行ない、別々の税率や課税、別々の規制やルールなどが設けよう、というものです。

つまり、5つの区は、いわば互いに「別の市」になります。今でも、隣の「市」は税も条例も違うし、手続きの用紙が違うこともあれば、隣の「市」の図書館や保育所や公民館は利用できないし、隣の「市」の広報や案内も配られないのと同じと思えば近いでしょう。(もちろん相互に対等な余裕があれば相互利用の特例が出来ないわけではないですが)

なお、今の大阪市のサービスについて、「もしやるとしたら、5区がやるか、大阪府がやるか」の「分担の考え方」は、協定書で整理されています。
5区がやらない、と仮定した分だけ、今の大阪市の収入は大阪府に移す仕組みです。(といっても、協定書に付いてる数百ページの表には、肝心の「区が本来やる仕事」と「大阪府に移る仕事」は、具体に書いてないのですが)

ただし、実際に「今の大阪市のサービスが続けられるかどうか?」 また「新たなサービスが必要になったらどうするか?」は、5区それぞれの「お金」の有る・無し、また余裕度や都合によることになります。
とにかく、5区が今よりコストがかかろうとかかるまいと、収入が増えようと減ろうと、それぞれ「できることをやる」ことになります。
いまの大阪市内の範囲に責任を持つ市や区は無くなります。
大阪府が、大阪府の他の42市町村全体のことを考えるのに合わせて、考えることになります。これが本来の「広域の視点」です。しかし、今回の「協定書」や維新の「都構想」では、大阪府と42市町村との関係は、たくさん問題があっても何も改善されません。(改革を標榜する維新マニフェストでも、バブル期同様、お金がいっぱいある楽観的な前提を置いてか、各地への開発投資プランばかりです。)

  今の「大阪市」と「(大阪市の廃止と)5つの特別区設置」を図で比較すると、こんな感じです。

05_3

注)「市」との違いについて
「市のようなもの」は厳密に言えば、「市」ではありません。
どんな市町村でもやってる「都市計画(用途地域)」や「下水道の維持管理・整備」「消防」などは、まったくやらず、区の範囲だけ、不慣れな大阪府がやります。府に移る仕事については「2(2)」をご覧ください。

注)「東京都の特別区」との違いについて(財政調整制度)
特別区は東京都と同じ仕組みになる」という言い方を耳にされたことがあるかもしれません。
たしかに、法律の仕組みとして「東京都の特別区」の地方自治法の仕組みが一部使われています。これは法律の技術的な都合で、なるべく元々ある仕組みを使って、制度の管理をしようとするものです。これが時折「都構想」という名前の根拠と言う人もおられる「都とみなす」です。
ただし、実際には、大切な点で、色々と東京都の特別区とは違う点があります。違いは、「仕事の内容」と「大阪府も含めたお金の流れ」と「お金(収入)の仕組み」です。

本当に、「東京都と同じ制度」だと3税(固定資産税・法人市民税・特別土地保有税)のみで5区の財政調整をまかなう制度になります。
これは東京の「都区制度」は、「23区に集中する膨大な資産・企業」からの膨大な税収を23区ではなく「東京都」が使えるようにする制度だからです。
ですから、税収が少ない「大阪」に制度だけあてはめると、大阪では税収が全く足りず5区の財政が成り経ちません。そこで、協定書では、”当面の間”、大阪府の条例に基づいて府が国からもらう交付税を一部足すことにしてなんとか成り立つようにしています。
ただしこれは「当面の間」に限るとされていて、、いずれは税収が足りなくても5区で我慢しあう、という「東京都の制度」と同様にしていくのが、協定書の前提です。総務省の「特段の意見無し」はこうした前提も踏まえたものです。
ですので、「大阪都構想」は、大阪府内としては、資産・企業が集中する今の大阪市内の税収を、大阪府が使えるようにする」制度ではありますが、
東京都と違って、お金が足りないものどうしの調整手間をかけ続ける制度になります。

ですので、賛成反対は別にして、「東京都と同じ」「東京並み」に「豊かになる」という説明はウソになります

 

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1.はじめに ~何を決める「住民投票」なの?

今回の住民投票では、5つの点が大きな特徴です。

(1)「大阪市の廃止」「特別区の設置」そして「そのやり方」の賛否を決める投票
(2)「宣伝文句」や「スローガン」を選ぶのではありません
(3)「楽観的すぎる仮定」に、用心が必要

(4)投票用紙には、「大阪市の廃止」と書かれていません(←注意!)
(5)1票でも多い方に決まってしまいます

(1)「大阪市の廃止」「特別区の設置」そして「そのやり方」の賛否を決める投票

そもそも、今回の「住民投票」で、何を決めようとしているのでしょうか?  それは、

1) 大阪市を廃止して、
2) 今の大阪市内を5つに分割して、5つの特別区をつくることを、
3)「協定書」に書いてある「中身とやり方」に従って行うこと、
この3つに、
丸ごと賛成か? 反対か?

つまり、

・賛成 =「協定書」の内容に丸ごと賛成

・反対 =「協定書」の全部または一部に賛成できない

を「2者択一」で決める住民投票です。

大阪市の廃止」説明されず、投票用紙にも記されてません。ご注意ください。


大阪市の廃止と特別区の設置のイメージ

03_6

  特別区の範囲と名前
・北区 :北区・福島区淀川区東淀川区都島区
中央区 中央区浪速区西成区天王寺区・西区 とされています。
・湾岸区 西淀川区此花区・港区・大正区住之江区
       (南港東1丁目以外の南港に限る)
・東区 :旭区・鶴見区城東区・東成区・生野区
・南区 平野区東住吉区阿倍野区住吉区住之江区(湾岸区部分を除く)
とするとされています。

(2)「宣伝文句」や「スローガン」を選ぶのではありません

「ムダを無くす」「二重行政の解消」とか「大阪を変える」など、勇ましく耳当たりよいスローガン、宣伝文句からは、肝心の具体的な「目的」「中身」はわかりません。

つまり「ムダ」の中身の説明も無いまま、「あなたはムダを無くしたいですよね?」と迫ったり、市民どうしの対立を煽るような場面すら見受けます。
しかし、それでは、正しく理解して、正しく判断することができません。

大切なのは「信じる・信じない」ではなく、
 

 

1) なにを「ムダ」と言ってるのか?

2) 「協定書」の”やり方”で、「ムダが無くなる」のか?

3) 「協定書」の”やり方”は、実際に可能なものなのか?
  (バブル期のプロジェクトのように「楽観的すぎる仮定」に基づいてないか?)

4) 「議会や行政が身近」になることで、誰の意見が通りやすくなるのか?
  (誰の意見が通りにくくなるのか?)

5) 「議会や行政が遠く」になること(=市から府に行く仕事)で、
  誰の意見が通りやすくなるのか?通りやすくなるのか?

を、理解して、判断しないといけません。

ですから、もし「ムダを無くすのに賛成なら、投票で賛成を!」という説明は詐欺(サギ)です。言った方に悪気はなくても。

 

(3)「楽観的すぎる仮定」に用心が必要です (詳しくは「2(3)」で)

まず「協定書」の「目的」についてですが、「無くなるムダ」の内容は具体に書かれていません。
無くなるとハッキリ想定されてるのは、「24区役所でやっている地域と協力した避難所管理などの防災、地域の公園などの管理、地域活動」などで、これらの予算や職員コストはかからない事とされてます。
(ほか、細かい施設の一部
廃止の「効果」は、「2(4)」をご覧ください。)

その他の 全ての仕事は、区か府に移行するとされています。
(府に行く仕事は、
「2(2)」をご覧ください)

ですから「ムダの解消」と言うのは、ほぼ「仕事の中身」には表れていません

一方、増えるコストはどうでしょう?
大きな1つの市でやってる仕事を5つに分ければ、手間が増えて人手のコストが多くかかるはずです。
新しい市役所並みの建物をいくつも建てる土地や工事のお金も余分に必要です。

しかし、「人手(職員数)」は、むしろ大幅に減らせる」という「楽観的すぎる仮定を置いた「推計」が示されています(長期財政推計)。
あくまでも「仮定」ですが、この「人手(職員数)」が削減できて「お金」が生まれることになります。
実は「相当の振れ幅を持ってみるべき」「極めて粗い試算」と念押しされてる「仮定」なのですが、橋下市長は「都構想によって生み出されると計算したお金」と断言しており、誤解が広がっています。

この「人手削減をアテにしたお金」の他に、
大阪市の廃止と関係のない「地下鉄の売却・民営化」と「ゴミ処理の民営化」によりお金が生み出されるとアテにして「試算」したものが、
橋下市長の言う「17年間で2700億円」のほぼ全てです。
なお、
詳しくは「4(4)」で説明しますが、
この「地下鉄」「ゴミ」でお金が生まれるか? にも、大きな疑問があります。

橋下市長はお金をアテにしているので、
大阪市の事業の売却=改革だ! これに反対する大阪市はつぶせ!」とのようですが、そもそも、大阪市の廃止とは別に、個々の事業についてしっかり検討すべきことです。一緒くたに議論・勝負する話ではありません。

 

(4)投票用紙には、「大阪市の廃止」と書かれていません

これも、実は、とても異例・異常なことなのですが、
皆さんに投票日に配られる「投票用紙」には、「大阪市の廃止」とは全く書かれていません。ただ、「大阪市における特別区の設置」 と書かれています。
しかし、問われてるのは初めのとおり「大阪市の廃止」と「区の設置」と「やり方」です。

大阪市は今のままあって、その中に設置すると誤解しないよう、注意が必要です。

もし、法律の表現に沿って書けば、「協定書に基づき、大阪市を廃止し、特別区を設けること」の賛成・反対とすべきなのですが。

大都市地域における特別区の設置に関する法律 (以下「特別区法」)

第一条  この法律は、道府県の区域内において関係市町村を廃止し、特別区を設けるための手続並びに特別区道府県の事務の分担並びに税源の配分及び財政の調整に関する意見の申出に係る措置について定めることにより、地域の実情に応じた大都市制度の特例を設けることを目的とする。

 

(5)1票でも多い方に決まってしまいます

今回の住民投票は、いくら投票率が低くても、1票でも多い方に決まります。
なので、投票の趣旨そのものに賛成できなくても、行かないと決まってしまいます。つまり、

皆さんの住民投票で、1票でも多い方に決まります。
例えば、「賛成」が1票でも多ければ、
 「協定書」の「中身とやり方」に従い、大阪市を廃止し、5つの特別区を作る
と決まります。
               (投票率がいくら低くても、1票でも多い方に決まります

という、責任重大な住民投票なのです。

たしかに「特別区」は、まだ実際には存在もしていないものです。
その是非を聞かれても、「楽観的すぎる仮定」を信じるか?信じないか?を
判断するのは難しいかもしれません。

 

 

 

まとめ

・確実な事実

大阪市政令指定都市)が無くなり、5つの区に分ける
・そのためのコストが必要
大阪府へは「組織の所管替え」があるものの、「統合」する仕事は余り無い

・楽観的すぎる仮定 (非現実な「効果」の仮定)

・5区に分けても、人手は増えない、むしろ、大幅に減らしてお金が生まれる と仮定
・「地下鉄の売却・民営化」と「ゴミ処理の民営化」により、大金が生まれる と仮定
 (しかも、大阪市の廃止とは関係無い)

 

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